月町1丁目1番地

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2018.06.08 Friday

日本のラジオ 「ツヤマジケン」

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         日本のラジオ 「ツヤマジケン」 ★★★★

     

     

    こまばアゴラ劇場で日本のラジオの「ツヤマジケン」を観る。

    犯罪史上名高い大量殺人事件の犯人を「同席させて」舞台が始まる。

    女子高生のまっすぐな身勝手さと、孤立を恐れる気持ちが交差する。

    期待していた人に裏切られると、身体のどこかでじわりと殺意が芽生える恐怖。 

     

     

     

    ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

     

     

     

    携帯の電波も入らない山奥に、合宿のため女子高の演劇部がバスでやって来る。

    途中部員のひとりがバスに乗り遅れて、到着してから大騒ぎになる。

    ちゃらんぽらんな顧問の教師、ツンデレの演劇部長はじめ、

    全員が何らかの思惑を持って、誰かを観察しながら行動している。

    そんな中、部屋の隅に“その男”を見つけたのはキコ(藤本紗也香)だった…。

     

     

     

    懐中電灯を頭につけたあのいで立ちで客席から登場し、部屋の隅にうずくまる男ムツオ。

    津山事件の犯人の名前は都井睦雄、バスに乗り遅れた生徒の名前は都井。

    そう思って当日パンフの人物相関図を見ると、登場人物は全員

    世を騒がせた殺人事件の犯人と同じ名字を持っている。

     

     

     

    偶然合宿所の管理人の男の秘密を知ってしまった生徒が彼に襲われ、

    目撃した生徒も襲われ、ついに殺人事件が起こってしまう。

     

     

     

    「好きな人が幸せになるのも、不幸せになるのも見たくない」という生徒の台詞、

    最初に、大好きだった祖母の首を斧で切り落とした睦夫の行動。

    身勝手な思い入れが先行する彼らの行動は

    勝手に他者に期待して、その期待を裏切る者を許さないという

    自己中心的な点で共通している。

    孤立するのを極端に恐れ、それを避けるためなら嘘をつくくらい何でもない。

    時折笑いを織り交ぜながらイマドキの女子高生をリアルに描き

    ふとしたきっかけで振れ幅が度を越せば、津山事件のようなことも起こり得る、と思わせる。

     

     

     

    「あと10人くらい…」と言いながら客席を抜けて去っていくムツオ。

    その思いを受け継ぐかのように、懐中電灯を頭に付け日本刀を持つキコとユキ。

    二人がこれからどうするのか、教師と部員たちに制裁を加えるのか、

    というところで舞台は終わる。

    女子高生の誰もが煮詰まって爆発する可能性を秘めているところがキモ。

    その爆発の連鎖が見たかったかな。

    殺戮シーンが見たいわけではないが、隅からじっと見つめるムツオの不満が

    彼女らに乗り移るような相互交流がもっとあればと思った。

    キコとユキがラスト、津山事件を思わせるいで立ちで出ていくのが若干唐突な感じ。

     

     

     

    キコを演じた藤本紗也香さんが巧い。

    とらえどころのない浮遊感があって、存在感大。

    ヤバいことをしている管理人の松本役の野田慈伸さん、それがばれた時の

    緊張感が素晴らしく、一気に客席も緊張した。

    ひたむきで世間知らずで、でもしたたかな女子高生たちが、実は一番怖いのかも。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     


    2018.05.20 Sunday

    MCR 「堀が濡れそぼつ」

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           MCR「堀が濡れそぼつ」 ★★★★★

       

       

       

      下北沢ザ・スズナリでMCRの「堀が濡れそぼつ」を観る。

      まったくこれじゃ堀は濡れそぼつしかないじゃないか、というお話。

      久しぶりに櫻井さんのブラック全開な展開がめちゃめちゃ楽しい。

      複数の強烈な個性が生き生きと躍動する感じは役者のテンションと巧さの賜物。

      みんなパワーあるなあ、中でも堀さんのテンション・コントロールはさすが。

      ハイスピードで繰り出す台詞の中にピュアなスピリッツが見える。

      飛び道具的キャラも効いているし、舞台の作り・場転もうまい。

       

       

       

       

      ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

       

       

       

      妻にはかつて恋人がおり、彼は自分の親友だった。

      彼が死んでしまって、自分はその彼女と結婚した。

      妻は妊娠している、郊外に一軒家を立てた、自分たちは幸せだ。

      ところが押しかけ隣人や昔の友達、怪しい霊媒師、出所して来た夫の友人など

      おかしな人々が出入りして平和なはずの新居に波風が立つ…。

       

       

       

      “何となく避けて通っていること”をおせっかいで意地悪な人々が

      容赦なくえぐり出してくれる“余計なお世話感”満載。

      おかげで夫婦は言うつもりの無かったことまで口に出し、溝に発展する。

      その中で堀のスタンスはぶれない。

      時々小さくぶれるのだが、芯はぶれない。

      だから孤独で切なくて、結果堀(堀靖明)は濡れそぼつ。

       

       

       

      そんな彼を、そして怪しい霊媒師(澤唯)に騙されて

      壺やらなにやら買わされている妻(笠井幽夏子)を救うのは

      意外なことにちょっと困った出所したばかりの友人櫻井(櫻井智也)だ。

      “人を殺すことを何とも思わない”この友人が黙って彼らを救う。

      さんざん言われっぱなしやられっぱなしだったからスカッとするラストが秀逸。

      めでたしめでたしで何だかとても嬉しくなる。

      この“世直しヤクザ”なキャラ、スピンオフで何かやって欲しいくらい。

       

       

       

      いつもながら伊達香苗さんのダイナマイトボディが存在感大。

      人の幸せを妬んで壊したがるキャラを遠慮なく演じて効果絶大。

      超年齢不詳な子ども(加藤美佐江)が飛び道具的に面白く、効いている。

      堀の妹の婚約者でAV男優(長瀬ねん治)が味わい深い。

      櫻井さんのキャラが久々に突き抜けて実に爽快。

      そして堀さん、いいヤツだなあ、お幸せに!

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       


      2018.05.12 Saturday

      EPOCH MAN「Brand new OZAWA mermaid!」

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              EPOCH MAN「Brand new OZAWA mermaid!」★★★★★

         

         

        千歳船橋・APOCシアターでEPOCH MANの「Brand new OZAWA mermaid!」を観る。

        小沢道成さんのひとり芝居観劇は2回目だが、今回も素晴らしかった。

        世間知らずな少女の“期待しすぎな”夢と好奇心がまぶしい。

        なんて綺麗な人魚、そして脚なんだろう!

        人魚は軽やかに東京を目指すが、

        パーカッションのドラマチックな演出が彼女の選択の重大さを表している。

        ライブならではのアクシデントをものともせず、

        たたみかけるような台詞とテンションでむしろパワーアップさせるのはさすが。

        ひたむきな“平成人魚姫”が東京を泳ぎ渡る。

         

         

        ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

         

         

        黒い舞台の奥にドラムセット。

        波の音が次第に高くなる中、開演を待つ。

         

         

        ティア―ドスカートの人魚は、海の底で人間世界の情報を収集している。

        「an an」を読んだりして地上の生活をシミュレーションするのが可笑しい。

        18歳を迎えた姉たちは、次々と広い海へ出ていく。

        決して人間に近づかないように、と注意を受けて…。

        やがて一番下の人魚が18歳になった日、彼女は海に落ちた人間の男を助ける。

        それが彼女に“人間になる”決心をさせる…。

         

         

        「人魚姫」は可哀想すぎる、という小沢さんの

        「純真さへの愛おしさ」が作品に満ちている。

         “東京イマドキ王子”とのあるある感満載の会話や

        情報に振り回される若い女性の心理が細やかに描かれてとてもリアル。

        日本中毎日どこかでこんなやり取りが交わされているだろう。

         

         

        演出的には

        一大決心をして“足”を手に入れた時のシーンが圧巻。

        姉たちの人形も笑った。

        冷蔵庫や水族館の演出も巧み。

        劇場を活かして目いっぱい楽しい演劇体験をさせよう!という

        気概にあふれている。

        ドラムのマルシェ鏡い気鵑、にこやかに人魚を見ているのがまたいい。

        ラスト、海辺で花火を見上げる人魚は何を思っただろう。

        これからどうするのだろう。

        小沢人魚は泡になったりしないと思う

        海へ還るより、東京を自在に泳ぐ方がずっと似合っている。

         

         

        ひとり芝居でありったけの想像力を結集させる小沢さん、

        次は何だろう、絶対また観に行かずにいられない。

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         


        2018.05.03 Thursday

        渡辺源四郎商店 「いたこといたろう」

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               渡辺源四郎商店 「いたこといたろう」 ★★★★★

           

           

          下北沢のスズナリで渡辺源四郎商店の「いたこといたろう」を観る。

          「なべげんイタコ演劇祭」と名付けた今回の公演、

          GW唯一の休みに、2本立てのうち1本を観ることが出来て観劇感激!

          青森に伝わる特異な文化“イタコ”という“生者と死者”をつなぐ者が

          なんと強烈かつ優しい存在であることか。

          経文と憑依のシーンがキモだが、人の本音が迫力満点で迫ってくる。

          「イタコ体験ツアー」とかあったら絶対行きたい!

           

           

          ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

           

           

          舞台中央から奥は大きな祭壇、階段状にぎっしりと並んだ神仏の類い。

          両脇にはたくさんの白い着物や制服など、亡くなった人のものだろうか。

          祭壇中央には深紅の細い珊瑚みたいなものが炎のように立っている。

           

           

          イタコ(林本恵美子)の元をひとりの女性が訪れる。

          このサトウハナ(三上晴佳)はホトケオロシを依頼するが、実は深い事情があった・・・。

           

           

          冒頭からイタコの唱える経文に惹き込まれた。

          インチキか、超現象か、という議論を超えた土着のリアリティが素晴らしい。

          もうひとつの見どころは憑依する場面、イタコの師匠でありハナの育ての親の登場だ。

          子を“捨てた”者、“捨てさせた”者、そして“捨てられたが大切にされた”者が交差する。

           

           

          イタコを通して、つまり人知を超えた存在から告げられる真実は

          恨みつらみを生むのではなく、聞き手に自然な受容の姿勢をとらせる。

          生きている者から言われると受け容れ難いことも、死者の声として告げられると

          どこかからりとした雰囲気ですんなり入って来る。

           

           

          アフタートークで畑澤氏が「3.11で被災しなかった東北人としての表現を探った結果」

          のひとつが「イタコ」であったという話が心に残る。

          「イタコ」も「カミサマ」も風土と結びついた文化である。

          “生きている者同士では上手くいかない世の中”にあって、人はこんなかたちで

          救い、救われるすべを生み出した。

          そこに演劇表現の原点を見い出した畑澤氏に感服。

          これからもイタコ劇作家として様々な作品を見せて下さい。

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           


          2018.04.24 Tuesday

          劇団夢現舎 「タバコの害について/たばこのがいについて」

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                 劇団夢現舎「タバコの害について/たばこのがいについて」 ★★★★

             

             

            高円寺のアトラクターズスタヂオにて劇団夢現舎の

            「タバコの害について/たばこのがいについて」を観る。

            会場ではアントン・パヴロヴィッチ・チェーホフの名にちなんで「行灯パブろびっち」を開店。

            受付でドリンクを注文し、小さなおつまみと共に頂きながら開演を待つ。

            休憩をはさんで30分のオリジナル作品と60分の「タバコの害について」の二本立て構成。

            “キャリアウーマンの妻と生活力のない偏食男”の攻防が始まる。

             

             

             

            ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

             

             

             

            2016年の公演ではチェーホフの人物像を楽しく見せてくれた後、本編となった。

            今回はまず夫妻の日頃のやり取りが再現される。

            客席近くに舟形の白い物体、「パブろびっち」の行灯がいくつか吊るされている。

             

             

             

            好き嫌いの多いチェーホフと、健康のために野菜を摂らせようとする妻の闘い。

            人参・ブロッコリー・ピーマン・ゴボウ、それにキノコが大嫌いなチェーホフに

            妻は毎日それらの入ったメニューを出し続ける。

            そして次第に若かりし頃のチェーホフと現在の情けない有様を比較して嘆く。

            白いバスタブで飼っているピラニアの野生を、夫はとうに喪っている。

            そして学校を経営するやり手の妻に命じられて“社会に有益な講演”をすることになった彼は

            「タバコの害について」と題して語り始めるのだが・・・。

             

             

             

            30年間の結婚生活を嘆く“結婚ぶっちゃけ話”に終始する講演、

            これに説得力を持たせる前半の“夫婦の日常”という構成が面白い。

            悪妻VS大作家、に見えるが、30年も一緒にいて7人の娘がいるという現実に

            “それなりに幸せな男のぼやき”ともとれる。

             

             

             

            久しぶりに観る益田さんは以前よりさらに緩急自在、

            この誇張された初老の男の嘆きを余裕をもって演じているように見える。

            金にならない作品を書き続けていられるのはこの妻のおかげ、

            野菜を食べなさいと口うるさい妻の言い分ももっともなことで、

            子どもの喧嘩みたいな夫婦のやり取りも愛情の裏返しと見ることが出来る。

             

             

             

            講演会場に怖ろし気な妻の人形を持ち込んだのには笑った。

            逃げ出したいんです、何もかも放り出して逃げ出したいんです・・・というのは

            夫に限らず、妻も密かに夢見る普遍的な野生の夢ということか。

             

             

             

            妻役の三輪さん、ろびっち店主の高橋さん、何だかとても洗練された印象。

            久しぶりの夢現舎はおもてなしも行き届いていて、この世界観はやっぱり特別な劇団だ。

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             


            2018.04.21 Saturday

            ポップンマッシュルームチキン野郎 「R老人の終末の御予定」

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                   ポップンマッシュルームチキン野郎 「R老人の終末の御予定」 ★★★★★

               

               

              池袋のシアターKASSAIでポップンマッシュルームチキン野郎の

              R老人の終末の御予定」を観る。

              人間が滅びた後、ロボットは人間に限りなく近づいていくのか。

              “ロボットのアダムとイブ”となったカップルのいきさつが秀逸。

              それにしても被り物もここまで来れば怖いものなし。

              効果音も相まってヨドバシとビックの戦いはいよいよ熱を帯びていく。

              私が好きなのは「ブレーカー」です。

               

               

              ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

               

               

              冒頭から同じ衣装の老人が二人登場。

              死期の近づいた天才科学者辰郎(加藤慎吾)と、彼が作ったロボットメカ辰郎(NPO法人)である。

              残される妻八重子(小岩崎小恵)を思ってのことだった。

              そしてメカ辰郎は、順調にその役目を果たして行く。

               

               

              辰郎と八重子の時代からおよそ千年後、地球はロボットと家電の世界になっている。

              ヨドバシファミリーのエレキギター・グレコ(野口オリジナル)と、ビックファミリーのポット・ハミー(平山空)は、

              まさにロミオとジュリエットのような恋人同士だが、両家の争いはついに全面戦争に突入。

              二人の恋の逃避行のさなか、グレコは古いチップを見つけ装着してみる。

              それは千年前、最初のロボットを創った人間の記憶が読み込まれたチップだった。

              両家の戦争は、そしてグレコは傷ついたハミーを助けることが出来るのか…。

               

               

              相変わらずバカバカしい被り物軍団が、キラリと光る真実をついている素晴らしさ。

              それにしても良く出来た衣装(?)だなあ、ポットとか洗濯機とかダイソンとか。

              衣装が大きく特殊なので、誰も落とした小物を屈んで拾うことができず、

              とうとう「えーい!」と足で袖へ蹴り込んでしまうのは、演出かなのかアクシデントなのか(笑)

               

               

              当日パンフで配役を見ないと誰が演じているのかわからないほど顔を塗っているが

              エレキのグレコ役・野口オリジナルさんが、いつもの華奢なイメージを覆す骨太な存在感。

              声も力強く新たな一面を見せつけて強烈な印象を残す。

               

               

              相変わらず達者な老けぶりを見せるNPO法人さん、

              楽しんで演じている余裕が伝わって来る高橋ゆきさん、

              共に安定感があり、安心して観ていられる。

               

               

              荒唐無稽な設定と見た目の可笑しさの中に鋭く問いかけて来るのは

              「ロボットの進化とは、限りなく人間に近づくことなのか?」という疑問だ。

              限りなく人間に近づくことは共存を困難にすることを意味し、その結果人間はロボットに滅ぼされてしまったのだ。

               

               

              ロボットは互いを攻撃しないという設定を超えて、

              メカ辰郎は古くなって故障した妻、ロボット八重子の電源を引き抜く。

              そして新婚旅行で行った熱海の海岸で、自らの電源をも引き抜いて息絶える。

              安楽死や自殺という本来設定に無い行為に及んだ時点で、

              ロボットは限りなく人間に近づき、もはやロボットではなくなっている。

              こういう場面では横尾下下さんの何気ない台詞が、実に深い意味を持つ。

              ロボットにも死後の世界があり、夫婦は又会える、と告げる場面がいい。

              最古のロボットリオ(加藤慎吾)の孤独な最期も忘れられない。

               

               

              吹原幸太さんは、いくつもの層を掘り当てながら観る楽しみを与えてくれる。

              それはそのまま作者の洞察の深さと、鋭い観察眼を表している。

              ホント、人は見かけによらないなあと拍手しながら思った。

              吹原さん、ありがとう。

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               


              2018.04.20 Friday

              20歳の国「青春超特急」

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                     20歳の国 「青春超特急」 ★★★★★

                 

                 

                 

                新宿のサンモールスタジオで20歳の国の「青春超特急」を観る。

                以前、国王の竜史さんが客演した他劇団の舞台を観て、とても興味を惹かれた。

                無駄のない台詞と構成の上手さ、そして熱量の凄さに圧倒された。

                “青春を懐かしんで”演じているのではない。

                “青春真っ只中感”満載で、全員が突っ走っている。

                オバサンはその超特急に同乗し、ラスト、フラカンの「深夜高速」で号泣したのだった。

                 

                 

                 

                ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

                 

                 

                 

                スチールの机と椅子が並ぶさっぱりした舞台。

                オブジェのように椅子が積み重ねられた一角がゲートのようになっている。

                この机と椅子を巧みに移動し、重ねることで場面が変わる。

                 

                 

                 

                卒業式当日、3年間の思い出をたどる超特急に乗って時間を遡る構成。

                文化祭や部活、恋、進路などに燃えつつ揺れるいくつかのカップル、

                青春ど真ん中を行く彼らの姿が大人目線でなく、臨場感たっぷりに描かれる。

                 

                 

                 

                斉藤マッチュさんの“登場しただけでキャラが見える”たたずまいが素晴らしい。

                他の劇団で何度も観ていたが、身体能力の高さを発揮するダンスや

                ハスに構えていながら、いい子ぶらずに母親思いをちらりと見せるのもいい。

                ラスト、千里(山脇唯)との電話のやりとりに温かさと清潔感があって大好きなシーン。

                 

                 

                 

                男(岡野康弘)のキャラが秀逸。

                鉄道をただの乗り物として眺めていた物静かな彼が

                「人がいて初めて鉄道は生きる、と気づいたんだ」と語るところ。

                恋やたばこ、ゲーセンやカラオケには縁の薄い彼が

                ひとりで哲学して、孤独のうちに成長していく様に感動を覚える。

                こんな全力疾走もあるのだと気づかされる。

                発車を告げる駅員のアナウンスとのギャップも素晴らしい。

                 

                 

                 

                野球部の丸山(古木将也)の最後の語り、泣かせるなあ。

                こんな風に一生懸命になる高校生がどれほどいるかわからないが

                なんて純粋な気持ちなんだろうと思う。

                 

                 

                 

                説明的台詞無しに豊かなキャラを立ち上げる竜史さんのセンスが光る。

                この青臭さ、要領の悪さ、全てが愛おしく輝いている。

                20歳の国に行かなければ絶対観ることのできない景色を観た思いがする。

                フラカンの「深夜高速」をありがとう!

                もうそれだけで泣けてもうた。

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 


                2018.04.06 Friday

                かわいいコンビニ店員飯田さん 「僕を見つけて/生きている」

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                       かわいいコンビニ店員飯田さん 「僕を見つけて/生きている」 ★★★★★

                   

                  下北沢のOFF FFシアターでかわいいコンビニ店員飯田さんの

                  「僕を見つけて/生きている」のうち「生きている」を観る。

                  2つ目の「進軍、ブラック社畜兵」が圧巻の面白さ。

                  怒涛の台詞とスピーディーな展開が素晴らしい。

                  “ドナドナ状態”にあるひとの哀しみと開き直りが三様に描かれる作品集。

                   

                   

                   

                  ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

                   

                   

                   

                  「俺とお前の生きる道」

                  妻に内緒で会社を辞めた夫とそれを知ってキレる妻の会話。

                  不利な立場の夫が結果的に妻を味方につける辺り、“持って行き方”が上手い。

                  それをビミョーで繊細な間で魅せる。

                  冒頭もう少しテンポを上げたら、もっと早くから引き込まれたかもしれない。

                  短編は早い段階でストーリーが見えた方が面白い。

                   

                   

                   

                   

                  「進軍、ブラック社畜兵」

                  ブラック企業の営業マン2人が、過酷なノルマや労働条件の下でもがく姿を描く。

                  対照的なホワイト企業のエリート社員も、実は組織の陰湿なやり方に取り込まれている。

                  支配する者とされる者、立場の強い者と弱い者、様々な力関係が浮かび上がる構造が秀逸。

                  弱い者同士、一度は団結して「辞めてやる!」と決意するも、

                  結局脱落も許されない運命が皮肉でもあり、哀しく愛おしい。

                  熱い台詞の応酬と、リアルな営業マンぶりが素晴らしい。

                  辻響平さん、熱いっすね!

                   

                   

                   

                  Gの家」

                  愛する飼い主から捨てられたペットたちの棲む家。

                  かつての飼い主たちの経済状況や価値観に翻弄されるペットたちの心情が

                  細やかに描かれていて切ないし、何といっても彼らがキュートなのだ。

                  片桐はづきさんのぷっくりしたシルエットが最高に可愛い。

                  被り物の楽しさ満載。

                   

                   

                   

                  かわいいコンビニ店員飯田さんってどんなネーミングだと不思議だったが、

                  当日パンフを見て素朴な優しい気持ちを大切にしているんだなあ、と思った。

                  それは作品にも反映されているような気がする。

                  ブラック社畜の土橋さんの潔癖なところや、Gのピュアなところ、

                  人の弱さを肯定し、受け容れながら前へ進むところ。

                  人生はドナドナだけど、明日の朝は顔を上げて歩こう、という気持ちにさせてくれる。

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   


                  2018.03.19 Monday

                  カンパニーデラシネラ 「椿姫」

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                         カンパニーデラシネラ 「椿姫」 ★★★★

                     

                     

                     

                    三軒茶屋の世田谷パブリックシアターでカンパニーデラシネラの「椿姫」を観る。

                    CoRich舞台芸術まつり!2016春」グランプリ受賞の記念公演。

                    流れるように舞台を滑る椅子とテーブル、それを自在に操る役者たちの動きに目を瞠った。

                    感情を細やかに伝える身体表現はとても素晴らしく、時折挟まれる台詞も効果的。

                    その反面あらすじを知らないとストーリーを追うことは難しいと感じた。

                    どちらを主にするか、ということなのだろう。

                     

                     

                     

                    ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

                     

                     

                     

                    客入れの時からタンゴの音楽が流れ、ドラマチックな舞台を予想させる。

                    中央に椅子が置いてあるのがほんのり判る程度の暗い舞台。

                     

                     

                     冒頭、なめらかに椅子を滑らせて、男女の駆け引きを見せるダンスが秀逸。

                    不安定でしたたかで、でも拒絶し切れない心情が鮮やかに揺れて

                    一気に椿姫の世界に惹き込まれる。

                     

                     

                     オペラの「椿姫」のあらすじは知っていたが、それでもオークションの場面などは

                    あまりよくわからなかった。

                    知っていればより楽しく深く観ることが出来るだろうけれど

                    安易な解りやすさは敢えて削り、濃い感情だけを抽出して見せたような感じ。

                    この潔いバランスが新鮮だった。

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     


                    2018.02.26 Monday

                    MU「このBARを教会だと思ってる」

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                           MU 「このBARを教会だと思ってる」★★★★

                       

                       

                       

                      下北沢の駅前劇場でMUの「このBARを教会だと思ってる」を観る。

                      4つの章から成る長編、とのことだがまさに長編。
                      サイコロを四方八方から見るように、ひとつの事象を多面的に見る視点が効いている。
                      一人ひとり深堀りすれば、登場人物の誰もがスピンオフの主役になりそう。
                      ガールズバーの面々がきゃあきゃあする、よくある場面でもシラケないのは
                      キャラの濃さに台詞がちゃんとついて行くから。
                      その意味で隙の無い配役が素晴らしい。
                      何でも屋の西川廉太郎さん、いいやつだな、惚れてまうがな!

                       

                       


                       

                      ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

                       

                       

                       

                       

                      舞台中央、横に長いカウンター、下手にはソファとテーブル

                      正面奥には本棚が壁状に置かれ、店の中と外を隔てている。

                      さっぱりしたモノクロの舞台。

                       

                       

                       

                      第1章 

                      浮気を疑って身辺調査を依頼する一方で、派手な結婚式を挙げたいから金を貸してほしい、

                      と姉に頼み込む妹。

                      不安を払しょくしようと無理矢理理想の結婚式をしたがる心理が上手い。

                      姉(古市みみ)の男前なキャラが魅力的。

                      「無敵だよ」の一言が秀逸。これ大ウケだった。

                       

                       

                       

                      第2章

                      帰宅拒否男4人組の、バーのアイドルみかちゃんをめぐる攻防。

                      現実逃避と癒しへの渇望、特別扱いしてほしいという甘え満載の男たちが滑稽。

                       

                       

                       

                      第3章

                      さざなみの上にあるガールズバーの面々がやって来て

                      カウンターでそれぞれの悩みを打ち明ける。

                      みんな厳しい現実を背負って、ガールズバーで働いている。

                      そして店での「現実じゃない方」が楽しくなってきた、と語り合う。

                      彼女たちのリアルと、対極にある嬌声、そのどちらもが彼女たちの人生だ。

                      決して饒舌ではないのに、一人ひとりの人生が立ち上がってくるのは

                      無駄の無い台詞と役者陣の力量。

                      とてもいいシーンだった。

                       

                       

                       

                      第4章

                      思いがけない展開で、さざなみとガールズバーの接点が明らかになる。

                      MUらしいビターなエンディングは、もやもやする反面考えさせる。

                       

                       

                       

                      しかし「何でも屋」の男、いいキャラだ。

                      彼の方がよほど人を救う気がする。

                      「明るい謙虚さ」を持った男が好きなので大変楽しかった。

                      西川康太郎さん、他の舞台も観たいなと思った。

                       

                       

                       

                      BARと教会はやはり似ているね。

                      どちらも秘密を話して楽になりたい人間が集まってくるところ。

                      他人の秘密を聴いて短いコメントをするしかない人間が待っているところ。

                      そして、何も変わらないけれどちょっと一休みするところ。

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       


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