月町1丁目1番地

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2018.04.24 Tuesday

劇団夢現舎 「タバコの害について/たばこのがいについて」

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         劇団夢現舎「タバコの害について/たばこのがいについて」 ★★★★

     

     

    高円寺のアトラクターズスタヂオにて劇団夢現舎の

    「タバコの害について/たばこのがいについて」を観る。

    会場ではアントン・パヴロヴィッチ・チェーホフの名にちなんで「行灯パブろびっち」を開店。

    受付でドリンクを注文し、小さなおつまみと共に頂きながら開演を待つ。

    休憩をはさんで30分のオリジナル作品と60分の「タバコの害について」の二本立て構成。

    “キャリアウーマンの妻と生活力のない偏食男”の攻防が始まる。

     

     

     

    ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

     

     

     

    2016年の公演ではチェーホフの人物像を楽しく見せてくれた後、本編となった。

    今回はまず夫妻の日頃のやり取りが再現される。

    客席近くに舟形の白い物体、「パブろびっち」の行灯がいくつか吊るされている。

     

     

     

    好き嫌いの多いチェーホフと、健康のために野菜を摂らせようとする妻の闘い。

    人参・ブロッコリー・ピーマン・ゴボウ、それにキノコが大嫌いなチェーホフに

    妻は毎日それらの入ったメニューを出し続ける。

    そして次第に若かりし頃のチェーホフと現在の情けない有様を比較して嘆く。

    白いバスタブで飼っているピラニアの野生を、夫はとうに喪っている。

    そして学校を経営するやり手の妻に命じられて“社会に有益な講演”をすることになった彼は

    「タバコの害について」と題して語り始めるのだが・・・。

     

     

     

    30年間の結婚生活を嘆く“結婚ぶっちゃけ話”に終始する講演、

    これに説得力を持たせる前半の“夫婦の日常”という構成が面白い。

    悪妻VS大作家、に見えるが、30年も一緒にいて7人の娘がいるという現実に

    “それなりに幸せな男のぼやき”ともとれる。

     

     

     

    久しぶりに観る益田さんは以前よりさらに緩急自在、

    この誇張された初老の男の嘆きを余裕をもって演じているように見える。

    金にならない作品を書き続けていられるのはこの妻のおかげ、

    野菜を食べなさいと口うるさい妻の言い分ももっともなことで、

    子どもの喧嘩みたいな夫婦のやり取りも愛情の裏返しと見ることが出来る。

     

     

     

    講演会場に怖ろし気な妻の人形を持ち込んだのには笑った。

    逃げ出したいんです、何もかも放り出して逃げ出したいんです・・・というのは

    夫に限らず、妻も密かに夢見る普遍的な野生の夢ということか。

     

     

     

    妻役の三輪さん、ろびっち店主の高橋さん、何だかとても洗練された印象。

    久しぶりの夢現舎はおもてなしも行き届いていて、この世界観はやっぱり特別な劇団だ。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     


    2018.04.21 Saturday

    ポップンマッシュルームチキン野郎 「R老人の終末の御予定」

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           ポップンマッシュルームチキン野郎 「R老人の終末の御予定」 ★★★★★

       

       

      池袋のシアターKASSAIでポップンマッシュルームチキン野郎の

      R老人の終末の御予定」を観る。

      人間が滅びた後、ロボットは人間に限りなく近づいていくのか。

      “ロボットのアダムとイブ”となったカップルのいきさつが秀逸。

      それにしても被り物もここまで来れば怖いものなし。

      効果音も相まってヨドバシとビックの戦いはいよいよ熱を帯びていく。

      私が好きなのは「ブレーカー」です。

       

       

      ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

       

       

      冒頭から同じ衣装の老人が二人登場。

      死期の近づいた天才科学者辰郎(加藤慎吾)と、彼が作ったロボットメカ辰郎(NPO法人)である。

      残される妻八重子(小岩崎小恵)を思ってのことだった。

      そしてメカ辰郎は、順調にその役目を果たして行く。

       

       

      辰郎と八重子の時代からおよそ千年後、地球はロボットと家電の世界になっている。

      ヨドバシファミリーのエレキギター・グレコ(野口オリジナル)と、ビックファミリーのポット・ハミー(平山空)は、

      まさにロミオとジュリエットのような恋人同士だが、両家の争いはついに全面戦争に突入。

      二人の恋の逃避行のさなか、グレコは古いチップを見つけ装着してみる。

      それは千年前、最初のロボットを創った人間の記憶が読み込まれたチップだった。

      両家の戦争は、そしてグレコは傷ついたハミーを助けることが出来るのか…。

       

       

      相変わらずバカバカしい被り物軍団が、キラリと光る真実をついている素晴らしさ。

      それにしても良く出来た衣装(?)だなあ、ポットとか洗濯機とかダイソンとか。

      衣装が大きく特殊なので、誰も落とした小物を屈んで拾うことができず、

      とうとう「えーい!」と足で袖へ蹴り込んでしまうのは、演出かなのかアクシデントなのか(笑)

       

       

      当日パンフで配役を見ないと誰が演じているのかわからないほど顔を塗っているが

      エレキのグレコ役・野口オリジナルさんが、いつもの華奢なイメージを覆す骨太な存在感。

      声も力強く新たな一面を見せつけて強烈な印象を残す。

       

       

      相変わらず達者な老けぶりを見せるNPO法人さん、

      楽しんで演じている余裕が伝わって来る高橋ゆきさん、

      共に安定感があり、安心して観ていられる。

       

       

      荒唐無稽な設定と見た目の可笑しさの中に鋭く問いかけて来るのは

      「ロボットの進化とは、限りなく人間に近づくことなのか?」という疑問だ。

      限りなく人間に近づくことは共存を困難にすることを意味し、その結果人間はロボットに滅ぼされてしまったのだ。

       

       

      ロボットは互いを攻撃しないという設定を超えて、

      メカ辰郎は古くなって故障した妻、ロボット八重子の電源を引き抜く。

      そして新婚旅行で行った熱海の海岸で、自らの電源をも引き抜いて息絶える。

      安楽死や自殺という本来設定に無い行為に及んだ時点で、

      ロボットは限りなく人間に近づき、もはやロボットではなくなっている。

      こういう場面では横尾下下さんの何気ない台詞が、実に深い意味を持つ。

      ロボットにも死後の世界があり、夫婦は又会える、と告げる場面がいい。

      最古のロボットリオ(加藤慎吾)の孤独な最期も忘れられない。

       

       

      吹原幸太さんは、いくつもの層を掘り当てながら観る楽しみを与えてくれる。

      それはそのまま作者の洞察の深さと、鋭い観察眼を表している。

      ホント、人は見かけによらないなあと拍手しながら思った。

      吹原さん、ありがとう。

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       


      2018.04.20 Friday

      20歳の国「青春超特急」

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             20歳の国 「青春超特急」 ★★★★★

         

         

         

        新宿のサンモールスタジオで20歳の国の「青春超特急」を観る。

        以前、国王の竜史さんが客演した他劇団の舞台を観て、とても興味を惹かれた。

        無駄のない台詞と構成の上手さ、そして熱量の凄さに圧倒された。

        “青春を懐かしんで”演じているのではない。

        “青春真っ只中感”満載で、全員が突っ走っている。

        オバサンはその超特急に同乗し、ラスト、フラカンの「深夜高速」で号泣したのだった。

         

         

         

        ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

         

         

         

        スチールの机と椅子が並ぶさっぱりした舞台。

        オブジェのように椅子が積み重ねられた一角がゲートのようになっている。

        この机と椅子を巧みに移動し、重ねることで場面が変わる。

         

         

         

        卒業式当日、3年間の思い出をたどる超特急に乗って時間を遡る構成。

        文化祭や部活、恋、進路などに燃えつつ揺れるいくつかのカップル、

        青春ど真ん中を行く彼らの姿が大人目線でなく、臨場感たっぷりに描かれる。

         

         

         

        斉藤マッチュさんの“登場しただけでキャラが見える”たたずまいが素晴らしい。

        他の劇団で何度も観ていたが、身体能力の高さを発揮するダンスや

        ハスに構えていながら、いい子ぶらずに母親思いをちらりと見せるのもいい。

        ラスト、千里(山脇唯)との電話のやりとりに温かさと清潔感があって大好きなシーン。

         

         

         

        男(岡野康弘)のキャラが秀逸。

        鉄道をただの乗り物として眺めていた物静かな彼が

        「人がいて初めて鉄道は生きる、と気づいたんだ」と語るところ。

        恋やたばこ、ゲーセンやカラオケには縁の薄い彼が

        ひとりで哲学して、孤独のうちに成長していく様に感動を覚える。

        こんな全力疾走もあるのだと気づかされる。

        発車を告げる駅員のアナウンスとのギャップも素晴らしい。

         

         

         

        野球部の丸山(古木将也)の最後の語り、泣かせるなあ。

        こんな風に一生懸命になる高校生がどれほどいるかわからないが

        なんて純粋な気持ちなんだろうと思う。

         

         

         

        説明的台詞無しに豊かなキャラを立ち上げる竜史さんのセンスが光る。

        この青臭さ、要領の悪さ、全てが愛おしく輝いている。

        20歳の国に行かなければ絶対観ることのできない景色を観た思いがする。

        フラカンの「深夜高速」をありがとう!

        もうそれだけで泣けてもうた。

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         


        2018.04.06 Friday

        かわいいコンビニ店員飯田さん 「僕を見つけて/生きている」

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               かわいいコンビニ店員飯田さん 「僕を見つけて/生きている」 ★★★★★

           

          下北沢のOFF FFシアターでかわいいコンビニ店員飯田さんの

          「僕を見つけて/生きている」のうち「生きている」を観る。

          2つ目の「進軍、ブラック社畜兵」が圧巻の面白さ。

          怒涛の台詞とスピーディーな展開が素晴らしい。

          “ドナドナ状態”にあるひとの哀しみと開き直りが三様に描かれる作品集。

           

           

           

          ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

           

           

           

          「俺とお前の生きる道」

          妻に内緒で会社を辞めた夫とそれを知ってキレる妻の会話。

          不利な立場の夫が結果的に妻を味方につける辺り、“持って行き方”が上手い。

          それをビミョーで繊細な間で魅せる。

          冒頭もう少しテンポを上げたら、もっと早くから引き込まれたかもしれない。

          短編は早い段階でストーリーが見えた方が面白い。

           

           

           

           

          「進軍、ブラック社畜兵」

          ブラック企業の営業マン2人が、過酷なノルマや労働条件の下でもがく姿を描く。

          対照的なホワイト企業のエリート社員も、実は組織の陰湿なやり方に取り込まれている。

          支配する者とされる者、立場の強い者と弱い者、様々な力関係が浮かび上がる構造が秀逸。

          弱い者同士、一度は団結して「辞めてやる!」と決意するも、

          結局脱落も許されない運命が皮肉でもあり、哀しく愛おしい。

          熱い台詞の応酬と、リアルな営業マンぶりが素晴らしい。

          辻響平さん、熱いっすね!

           

           

           

          Gの家」

          愛する飼い主から捨てられたペットたちの棲む家。

          かつての飼い主たちの経済状況や価値観に翻弄されるペットたちの心情が

          細やかに描かれていて切ないし、何といっても彼らがキュートなのだ。

          片桐はづきさんのぷっくりしたシルエットが最高に可愛い。

          被り物の楽しさ満載。

           

           

           

          かわいいコンビニ店員飯田さんってどんなネーミングだと不思議だったが、

          当日パンフを見て素朴な優しい気持ちを大切にしているんだなあ、と思った。

          それは作品にも反映されているような気がする。

          ブラック社畜の土橋さんの潔癖なところや、Gのピュアなところ、

          人の弱さを肯定し、受け容れながら前へ進むところ。

          人生はドナドナだけど、明日の朝は顔を上げて歩こう、という気持ちにさせてくれる。

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           


          2018.03.19 Monday

          カンパニーデラシネラ 「椿姫」

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                 カンパニーデラシネラ 「椿姫」 ★★★★

             

             

             

            三軒茶屋の世田谷パブリックシアターでカンパニーデラシネラの「椿姫」を観る。

            CoRich舞台芸術まつり!2016春」グランプリ受賞の記念公演。

            流れるように舞台を滑る椅子とテーブル、それを自在に操る役者たちの動きに目を瞠った。

            感情を細やかに伝える身体表現はとても素晴らしく、時折挟まれる台詞も効果的。

            その反面あらすじを知らないとストーリーを追うことは難しいと感じた。

            どちらを主にするか、ということなのだろう。

             

             

             

            ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

             

             

             

            客入れの時からタンゴの音楽が流れ、ドラマチックな舞台を予想させる。

            中央に椅子が置いてあるのがほんのり判る程度の暗い舞台。

             

             

             冒頭、なめらかに椅子を滑らせて、男女の駆け引きを見せるダンスが秀逸。

            不安定でしたたかで、でも拒絶し切れない心情が鮮やかに揺れて

            一気に椿姫の世界に惹き込まれる。

             

             

             オペラの「椿姫」のあらすじは知っていたが、それでもオークションの場面などは

            あまりよくわからなかった。

            知っていればより楽しく深く観ることが出来るだろうけれど

            安易な解りやすさは敢えて削り、濃い感情だけを抽出して見せたような感じ。

            この潔いバランスが新鮮だった。

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             


            2018.02.26 Monday

            MU「このBARを教会だと思ってる」

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                   MU 「このBARを教会だと思ってる」★★★★

               

               

               

              下北沢の駅前劇場でMUの「このBARを教会だと思ってる」を観る。

              4つの章から成る長編、とのことだがまさに長編。
              サイコロを四方八方から見るように、ひとつの事象を多面的に見る視点が効いている。
              一人ひとり深堀りすれば、登場人物の誰もがスピンオフの主役になりそう。
              ガールズバーの面々がきゃあきゃあする、よくある場面でもシラケないのは
              キャラの濃さに台詞がちゃんとついて行くから。
              その意味で隙の無い配役が素晴らしい。
              何でも屋の西川廉太郎さん、いいやつだな、惚れてまうがな!

               

               


               

              ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

               

               

               

               

              舞台中央、横に長いカウンター、下手にはソファとテーブル

              正面奥には本棚が壁状に置かれ、店の中と外を隔てている。

              さっぱりしたモノクロの舞台。

               

               

               

              第1章 

              浮気を疑って身辺調査を依頼する一方で、派手な結婚式を挙げたいから金を貸してほしい、

              と姉に頼み込む妹。

              不安を払しょくしようと無理矢理理想の結婚式をしたがる心理が上手い。

              姉(古市みみ)の男前なキャラが魅力的。

              「無敵だよ」の一言が秀逸。これ大ウケだった。

               

               

               

              第2章

              帰宅拒否男4人組の、バーのアイドルみかちゃんをめぐる攻防。

              現実逃避と癒しへの渇望、特別扱いしてほしいという甘え満載の男たちが滑稽。

               

               

               

              第3章

              さざなみの上にあるガールズバーの面々がやって来て

              カウンターでそれぞれの悩みを打ち明ける。

              みんな厳しい現実を背負って、ガールズバーで働いている。

              そして店での「現実じゃない方」が楽しくなってきた、と語り合う。

              彼女たちのリアルと、対極にある嬌声、そのどちらもが彼女たちの人生だ。

              決して饒舌ではないのに、一人ひとりの人生が立ち上がってくるのは

              無駄の無い台詞と役者陣の力量。

              とてもいいシーンだった。

               

               

               

              第4章

              思いがけない展開で、さざなみとガールズバーの接点が明らかになる。

              MUらしいビターなエンディングは、もやもやする反面考えさせる。

               

               

               

              しかし「何でも屋」の男、いいキャラだ。

              彼の方がよほど人を救う気がする。

              「明るい謙虚さ」を持った男が好きなので大変楽しかった。

              西川康太郎さん、他の舞台も観たいなと思った。

               

               

               

              BARと教会はやはり似ているね。

              どちらも秘密を話して楽になりたい人間が集まってくるところ。

              他人の秘密を聴いて短いコメントをするしかない人間が待っているところ。

              そして、何も変わらないけれどちょっと一休みするところ。

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               


              2018.01.10 Wednesday

              ゴツプロ! 「三の糸」

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                     ゴツプロ!「三の糸」 ★★★★

                 

                 

                 

                下北沢本多劇場でゴツプロ!の「三の糸」を観る。

                最初のコメディタッチはイマイチすんなり入ってこなかったが

                その後怒涛の展開で一気に惹き込む力はさすが。

                連綿と受け継がれる芸道の厳しさと、翻弄される個人の葛藤が描かれる。

                後半の浜谷さん、塚原さんのキャラの切り替えが鮮やかで目を見張った。

                 

                 

                 

                ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

                 

                 

                 

                舞台中央に1本の古木が天井までそびえている。

                山深いこの場所は、津軽三味線の万沢流初代が幼くして捨てられていた場所。

                二人の兄弟は盗みをして生きていたが、三味線と出会って新しい道を歩み始めた。

                以来、家元を継いだ者はみな、この場所へ報告に来る習わしとなっている。

                だが今の七代目だけは、ずいぶんと遅れて今日ようやくここへやって来たのだった。

                やがて奇妙な男たちが現れる・・・。

                 

                 

                 

                言わばコメディとシリアスを合わせ持つ骨太ファンタジーと言えようか。

                若干冒頭のコメディ部分が長く感じられるのは、人間関係が見えていないせいか。

                やがて七代目との関係が明らかになり、それぞれの家元継承事情が語られると

                物語は一気に緊張感を増して面白くなる。

                 

                 

                 

                それにしても後半、塚原大助さんのキャラの切り替えの見事さ。

                また浜谷康幸さんの驚愕の事実を受け止める台詞の切なさ。

                こういう人がいるからゴツプロ!はただの“男劇団”ではないのだ。

                 

                 

                 

                ラストの三味線は大変な努力の跡がうかがえる素晴らしい演奏だったが

                やはりここはプロの小山会にも「三の糸」の音色を響かせて欲しかった。

                流派と家元の重みを印象付けるためにも。

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 


                2018.01.08 Monday

                渡辺源四郎商店 「ハイサイせば」

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                       渡辺源四郎商店 「ハイサイせば」 ★★★★★

                   

                   

                   

                  こまばアゴラ劇場で渡辺源四郎商店の「ハイサイせば」を観る。

                  現実の重みと軽妙な笑い、その絶妙なバランスが素晴らしい。

                  沖縄と青森という、接点が薄いと思われる2つの地域を

                  卓越した発想力と若干の力技で見事につないで魅せる。

                  まさに今、現代にもう一度起ころうとしていることを見る思いがした。

                   

                   

                   

                  ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

                   

                   

                   

                  舞台中央、横長に置かれたテーブルとその前に4脚の椅子は

                  全て白い布で覆われ、上から紐のようなものでぐるぐる縛られている。

                   

                   

                   

                  ここは海軍省内部、理由も告げられないまま連れて来られた4人、

                  青森出身の2人と沖縄出身の2人は、敵に傍受されないよう

                  方言による電話通信に協力するよう命令される。

                  が、その目的にはある秘密が隠されていた…。

                   

                   

                   

                  津軽弁と琉球語という強烈な個性を持つ言語の“わからなさ”がとにかくおかしい。

                  特に今回は琉球語の解らなさ加減が突出しており、津軽弁が聞き取りやすかったほど。

                  だがその琉球語の解らなさのおかげで、人々は何と理不尽な扱いを受けたことか。

                   “わけのわからない言葉を使う、スパイのような怪しいやつ”というレッテルを貼られ、

                  軍隊でも他は県ごとに配属されたのに、沖縄だけはバラバラに配属されたという。

                  沖縄は今も昔も屈辱的な、不当な扱いを強いられている。

                   

                   

                   

                  三上晴佳さんの、沖縄の人とことばに対して敬意を払う態度が素晴らしい。

                  わからなさの先にある、ことばとしての力に尊敬の念を抱いていることが伝わって来る。

                  「田舎者めが」「ごく潰しか」という海軍少佐のつぶやきは、

                  そのまま政府の姿勢を表している。

                   

                   

                   

                  同時多発でまくしたてられる二つの言語の解らなさに笑っているうち

                  それを冷やかに上から見ている“政府のやり方”に気付く。

                  このコントラストが鮮やかで素晴らしい。

                   

                   

                   

                  私は畑澤氏の“教育者としての視点”が好きだ。

                  「何にも知らずにぼーっとしている日本人」に、常に何かを突き付けてくる。

                  まず知ることが全ての始まりであることを思い出させてくれる。

                  「方言札」をはじめ、今回も初めて知ることが多かった。

                  「遠くで起こることを身近に」というメッセージを発信し続ける

                  渡辺源四郎商店をこれからも追いかけたい。

                   

                   

                   

                   

                  翌日青森県出身の友人ともう一度観劇。

                  この日はアフタートークもあったので、この企画の“そもそも話”が聞けた。

                  沖縄の当山氏が、2015年に小劇場の運営を学ぶため

                  全国を視察して回った中に「渡辺源四郎商店」も含まれていた。

                  その際「いつか一緒に」という話をしたことが実現したのだという。

                   

                   

                   

                  沖縄の歴史という、まずゆるぎない事実ありきからスタートする制作、

                  なべげんの「伝えたいことは演劇を通して伝える」姿勢は

                  制約であると同時に使命感でもあるのではないか。

                   

                   

                   

                  生き生きとした闊達さ、哀愁を帯びたトーンなど

                  ネイティブの方言でしか表現できない世界が見事に合体した作品だった。

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   


                  2017.12.15 Friday

                  天幕旅団 「室温〜夜の音楽〜」

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                         天幕旅団 「室温〜夜の音楽〜」 ★★★★★

                     

                     

                     

                    新宿のSPACE梟門で天幕旅団の「室温〜夜の音楽〜」を観る。

                    これが面白かった。

                    素晴らしく良く出来た戯曲、これを選び演出した渡辺さんのセンス、

                    激情ほとばしる台詞を誰一人噛まない役者陣、と久しぶりに観ていて熱くなった。

                    奇妙なオープニング、「たま」の不気味なまでに乾いた歌詞が異様な世界に誘う。

                    だがそれはごく普通の人々のすぐ隣に存在していて、それが空恐ろしい。

                     

                     

                     

                    ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

                     

                     

                     

                    舞台中央に大きなダイニングテーブル、部屋の隅には猫足の電話台に黒電話。

                    古い洋館に住む心霊研究家の海老沢(凪沢渋次)と娘のキオリ(渡辺実希)。

                    だがキオリの双子の姉妹サオリの命日の日、この家には何人もの来客があった。

                    毎日のように入り浸る警官(佐々木豊)、

                    気分が悪いから休ませてくれと上がり込んだ図々しいタクシー運転手(竹田航)、

                    熱心な海老沢のファンだという女性(もなみのりこ)、

                    そしてサオリを死に追いやった4人の少年のうちのひとり間宮(渡辺望)が

                    10年の刑を終えて出所し、海老沢家を訪れる…。

                     

                     

                     

                    実はこれら登場人物は皆、誰かを殺した、あるいは殺そうとしている。

                    前半の滑らかでない人間関係の原因は、後半一気に明らかにされ、

                    驚愕の事実が明かされる。

                    誰かを殺したいと思う理由はそれぞれだが、“憎悪”という点で一致している。

                    憎悪の理由が明かされるプロセスがスリリングでたまらない。

                    これは人間を犯罪へと突き動かす最も強い原動力である“憎悪”のたぎる芝居である。

                    たぎる芝居だから皆よく吠えるのだが、吠え方がまた良かった。

                    切羽詰まった、あるいは追いつめられた、あるいは他の手段を思いつかないほどの

                    “憎悪”を懐に持つ登場人物たちの陰影が素晴らしい。

                     

                     

                     

                    渡辺実希さん、ここ何作かで暗い感情をむき出しにする役に磨きがかかった感じ。

                    最初に間宮を罵倒するシーンは圧巻の迫力。

                    佐々木豊さん、笑いを誘う前半のコミカルなイメージと、

                    後半一転して狂気を爆発させるシーンとのギャップが素晴らしい。

                    渡辺望さん、元不良少年だが、ピュアな部分も持ち合わせている間宮を演じた。

                    犯人にもかかわらず思わず好感を抱いてしまうのは、

                    犯罪者でありながら一番普通の感覚の持ち主に見えることのほかに、

                    渡辺さんの素の品の良さも理由のひとつだろうか。

                    抽象的な犯行理由が、あとから説得力を持ってじわりとにじみ出して来る。

                    加藤晃子さん、以前ほどの少年っぽさはないが、浮遊する不思議な存在感がある。

                     

                     

                     

                    もなみのりこさん、偽名を使って海老沢に近づく女の表裏が上手い。

                    竹田航さん、観ている方がイラつくほどのうざいキャラ。

                    ハイテンションで隙なく演じていて巧み。

                     

                     

                     

                    ケラさんは、こんなダークな本も書くんですね。

                    軽い笑いを入れながらずどんと落とされた感じでとても見応えがあった。

                    天幕旅団の底力を見た思いがする。

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     


                    2017.12.03 Sunday

                    初級教室 「高速を降りて、国道を2キロ走った、モミの木に囲まれたカフェレストラン」

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                           初級教室 「高速を降りて、国道を2キロ走った、モミの木に囲まれたカフェレストラン」★★★

                       

                       

                       

                      下北沢OFF OFFシアターで初級教室の

                      「高速を降りて、国道を2キロ走った、モミの木に囲まれたカフェレストラン」を観る。

                      それを奇跡と信じるか、偶然の重なりと受け取るかによって、真実の色合いは変わる。

                      役者さんは隙なく熱演、悪人も出てこない、美しいエピソード、

                      だがちょっと物足りなさを感じるのは、人々を取り巻く現実的な背景が見えづらいせいか?

                       

                       

                       

                      ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

                       

                       

                       

                      高速道路が出来たため、経営難に陥っている森の中のカフェレストラン。

                      オーナー夫妻から店を任されている青年信之助(石井俊史)と、

                      オーナーの親戚で、知的障害を持つ聖美(川口果恋)が日々切り盛りしている。

                       

                       

                       

                      オーナー夫妻には、交通事故で2人の子どもを死なせたという苦しい過去がある。

                      実は聖美は親戚ではなく、オーナーが森の中に座っていた少女を連れ帰って来たのだった。

                      あまりにも死んだ娘にそっくりだったから。

                      そしてもう1人、オーナーが見出した若手バンドのメンバーのひとりも、

                      死んだ息子にそっくりだった…。

                       

                       

                       

                      森とレストランの一帯を買い取って再開発しようとする堀田(奥村渉)の

                      真意がつかみづらかったのが残念。

                      オーナーの一族と昔選挙で争ったことがあるらしいが

                      どんな思いでここへ戻って来たのかがあっさりしすぎて伝わってこない。

                       

                       

                       

                      聖美が本当に奇跡を起こすなら、オーナーの病気が治るはずだが

                      そこは単なるファンタジーではない作品らしく、一方的なハッピーエンドに終わっていない。

                      人生はハッピーもアンハッピーも同じくらいあるのだというバランスが良かった。

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       


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