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2017.05.13 Saturday

ポップンマッシュルームチキン野郎 「死なない男は棺桶で二度寝する」

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    ポップンマッシュルームチキン野郎 「死なない男は棺桶で二度寝する」★★★★

     

     

    池袋のシアターKASSAIでポップンマッシュルームチキン野郎の

     「死なない男は棺桶で二度寝する」を観る。

    若干既視感なくもないが、キレの良いブラックなギャグと

    シリアスなストーリーの対照が鮮やかなのはさすが吹原作品。

    前半のおふざけタイムに、誰があのラストの涙を想像できただろうか。

    「死なない男」は世界一孤独な、そして世界一愛された男だった。

     

     

     

    ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

     

     

     

    開演前の全力投球も素晴らしく、

    (ほんと、全力の人を見るとどうして笑っちゃうんだろ?)

    「いいトシをして定職にも就かず…」という私の一番好きな格言(?)を聴くと

    ああ、またポップンの舞台を観に来たんだなあと心の底から幸せな気持ちになる。

     

     

     

    前半のユルさは、すべて後のシリアスな展開のためにあると言ってよいだろう。

    なんたって時事ネタの中に痛烈な批判精神を練り込んだ末に

    アメリカ大統領が日本の風呂屋で死んでしまうのだ。

     

     

     

    本題は、いい加減な日本の首相の友人でもあった一人の男、

    はるか昔に人魚を食らって不死の身体になった男(吉田翔吾)である。

    この男と結婚した信子(小岩崎小恵)が、夫の過去に疑問を持ったことから

    私たちは共に彼の過去を紐解くことになる。

     

     

     

    吉田翔吾さんの、浮世離れしたピュアな浮遊感が素晴らしい。

    ソフトな優しいキャラが、激しい憎しみを見せ、誰とも共有できない孤独を漂わせる。

    ポップンは全員が主役を張れるところがすごいと思うが、

    同時に全員を主役にしようとして作品を書く脚本家の愛情を感じる。

     

     

     

    NPO法人さんと井上ほたてひもさんの“バスタオル”や“相撲”の掛け合いなど観ると

    その演じていないような、素でやっているだけにも見える天然のボケぶりが

    本当に素晴らしく、リピートしても全く飽きない。

     

     

     

    相変わらず横尾下下さんの凄みのあるキャラには説得力があって

    ユルいムードから一瞬のうちに、観る者を暗がりへと突き落す威力を持つ。

    異様な風体といい、精神病棟にいる不安定さといい、

    「うちの犬はサイコロを振るのをやめた」の元兵士を彷彿とさせ

    そこが素晴らしいと同時に既視感を抱かせる要因でもある。

     

     

     

    ラスト、再びのピュアな展開に泣かされながら、

    この両極の鮮やかなコントラストこそが、ポップンの底力であり、魅力なのだと思い知る。

    他劇団がやろうとしてやり切れずに、役者の微妙な苦笑いにシラケて終わる、

    あの難しさを全力でやってのけるポップンに心から拍手!

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     


    2017.05.08 Monday

    劇団チョコレートケーキ 「60'sエレジー」★★★★★

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      劇団チョコレートケーキ 「60’sエレジー」

       

       

      新宿サンモールスタジオで劇団チョコレートケーキの 「60’sエレジー」を観る。

      高度経済成長期の高揚感と、その波に乗れない人々の悲哀が“日々のことば”で語られる。

      上手く転身できない、あるいはしようとしない人々の、焦燥感と苛立ちが痛いほど切ない。

      集団就職の少年役、足立英さんの初々しさと瑞々しさに感嘆。

      脚本がいいなあ。台詞がいいなあ。

      歴史物の格調高いのも好きだが、普通の会話でこんなにボロ泣きしたのは久しぶりだ。

       

       

      ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

       

       

      舞台は昭和35年、東京オリンピックを前に、東京下町の小さな蚊帳工場が

      一人の集団就職の少年を迎える。

      下手にはガラガラッと外から入れば広がる三和土、奥には作業場がある。

      上手は神棚が祭られた居間である。

      会津から来た少年修三(足立英)は、ベテランの職人(林竜三)に仕事を仕込まれ

      社長夫妻(西尾友樹、佐藤みゆき)の愛情に包まれて成長する。

      だが高度成長期の日本はその生活様式までもが変化、蚊帳の需要は次第に減っていく…。

       

       

      昭和30年代の推進力ともなった、時代の高揚感が伝わってくる。

      劇中の台詞にもあったが、戦中戦後の物の無い時代の反動にも見える物欲と拝金主義。

      それを享受する人がいる一方で、変化する社会について行けない人も多かったはずだ。

      商品開発などという器用さを持たない職人気質と、

      商売変えを考えるより、人としての義理を優先する社長の心情は、

      時代へのささやかな抵抗にも見える。

       

       

      その不器用で一途な社長の思いがほとばしるような西尾友樹さんの演技だった。

      冒頭テンションの高さにちょっとびっくりしたが、それが彼の“照れ”の裏返しと判ると

      妻役の佐藤みゆきさんとの相性も良く、バランスの良さは物語の要となる。

      古いタイプと言われるのだろうが、いい夫婦だなと思う。

      正しい選択ではないのかもしれない。

      だが常にベストの選択をしたのだ、この夫婦は。

       

       

      岡本篤さん演じる社長の弟の、軽妙だが繊細なキャラが素晴らしい。

      頑固な兄の選択を受け容れて、自分が口減らしのために転職する。

      ふと、岡本さんが社長、西尾さんが弟、という配役もあったかもしれないと思ったりしたが、

      この弟の鷹揚さは、やはり岡本さんだろう。

       

       

      ベテラン蚊帳職人役の林竜三さんが秀逸。

      その佇まい、風呂敷包みを持って帰る仕草、潔さなどすべてが年季と実直さを表している。

       

       

      兄弟の幼馴染で隣に住む実役の日比谷線さん、軽いだけの紙芝居屋かと思いきや

      親身になって「引き際を誤るなよ」と忠告し、自身も不動産屋に就職する男がとても良かった。

      時代を冷静に見て家族のために身を処するが、どこか一抹の寂しさをたたえている。

       

       

      先代のときから蚊帳を仕入れてくれた寝具店の営業マンを演じた浅井伸治さん、

      相変わらず隙の無いなりきりぶりが見事だった。

      会社の方針との板挟みに悩みながらも、蚊帳工場に冷静なアドバイスをする、

      その反面、面倒見が良く、修三の次の就職先を世話したりする人情派。

      嫌な話をしに来た時の、緊張感が伝わって来るような姿勢や歩き方が素晴らしい。

       

       

      集団就職で状況してきた少年から、夫婦の元で夜間高校、大学と進学する修三の

      刻々と変化する様を演じた足立英さん、

      瑞々しい少年期から、理想に燃えて学生運動に身を投じる青年期まで演じきった。

      彼が72歳(確か…)でこういう最期を遂げるのかと思うと、誠に寂しい。

      修三が一番輝いていたのは、蚊帳工場で過ごした10年間だったのだろう。

       

       

      新しい職場へ移る修三に妻が、困ったときにはいつでもおいでとかけた言葉

      「必ずあんたの味方になるから」という台詞にボロ泣きした。

      ラスト、修三が大学に合格した日のシーン、

      西尾さんの「合格です」という小さな台詞に、笑いながらボロ泣きした。

      何度ボロ泣きしただろう、どれも市井の人々の日常のことばに。

       

       

      「何かを成し遂げた」人も素晴らしいが

      「何も成し遂げずに終わった」人も素晴らしい。

      チョコレートケーキは、そのどちらにも光を当てることが出来る。

      再びの「東京オリンピック」を前に、私たちはまた何かを喪うのだろうか。

      そんなことを考えさせてくれる作品、ありがとうございました。

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       


      2017.04.18 Tuesday

      演劇ユニットどうかとおもう 「在り処」

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             演劇ユニットどうかとおもう 「在り処」★★★★

         

        下北沢のギャラリースターダストで演劇ユニット「どうかとおもう」の「在り処」を観る。

        だるま座の剣持直明さんしか知らなかったので、それ目当てで行ったが

        力のある役者さんが隙の無い舞台を見せるので惹き込まれた。

        冒頭、前説の清水大将さんが暗転の後、さっきのいで立ちに帽子を被っただけで

        空巣の役で登場してくるのが面白い。

        笑いながら観た後に、老婆の底なしの孤独が見えてくる。

         

         

        ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

         

         

        平日の昼間、小さなギャラリースペースには椅子が増設され客席は満員。

        舞台は畳敷きの老婆の居間、剣持さんが台の下に横になると、

        その上からこたつ布団がかけられ、新聞紙やペットボトルなどが巻き散らかされる。

        雑然というより、ゴミだらけの混乱した一人暮らしの老婆の部屋が完成、

        ここまでを最初に見せてしまう。

        ストーリーは、ここに空巣(清水大将)が忍び込み、まず見つけた印鑑をポケットに入れ

        通帳を探すところから始まる。

        こたつの中に老婆が居るのを発見して互いに叫び声をあげるが

        息子と勘違いされた空巣は、そのまま息子として通帳を探し続ける…。

         

         

         

        少ししんどそうな老婆の立ち居振る舞いがリアル。

        通帳が見つかったらさっさと帰ってしまう息子を引き留めようと

        ポケットに隠して見つからないふりをする心が切ない。

        空巣が、見つけた通帳を一度は放棄して、盗まないのか…?と思わせる展開が秀逸。

        結局通帳を持って出ていく空巣の表情が、侵入した時と全く違う。

        母親に次々と金を出させるダメ息子と、自身も金に困っている空巣が見事にダブる。

         

         

         

        そこに入ってくるボランティアの学生(松村紗瑛子)も上手く絡んで楽しい。

        空巣を息子と思い込んで説教しまくるところが良い。

        滑舌も勢いもあって、男2人に引けを取らない存在感を見せた。

         

         

         

        ただこの設定でこのキャラなら、もっといろんなことが出来そうな気もする。
        ”切なさ”とくすくす笑いだけでなく、もっとどかんと泣いたり笑ったり
        大きく揺さぶってくる出来事が欲しいと思うのは欲張り過ぎか。
        品よく振れ幅の小さいところに若干の物足りなさを覚えた。

         

         

         

        姪が借金したくて訪ねてくると解っていても、ひとりでいるよりは良い。

        新聞読んでご飯食べて散歩して新聞読んでご飯食べて寝る…だけよりは良い。

        その現実を息子も、息子のふりをする空巣も、ボランティアの学生も変えることは出来ない。

        ただほんの一瞬関って、また去って行く。

        その一瞬を、老婆がどれほど渇望しているか、一人に戻った時の底なしの孤独が

        くっきりと刻まれた背中が素晴らしかった。

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         


        2017.04.05 Wednesday

        もぴプロジェクト 「マークドイエロー」

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                もぴプロジェクト「マークドイエロー」 ★★★★★

           

           

          王子のまる学習会王子小劇場でもぴプロジェクトの「マークドイエロー」を観る。

          緊張感あふれる照明とアホダラ経(?)唱和の迫力に冒頭から圧倒された。

          正常と異常の境界は誰が決めるのか、複雑怪奇な共依存の心理、

          そして謎解きよりも“自己の喪失”に戦く男の孤独と焦燥感がビシビシ伝わってくる。

          狂言回しのさひがしジュンペイさんが軽妙さと渋さのグッドバランス!

           

           

           

          ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

           

           

           

          四角い舞台を四方から客席が囲んでいる。

          舞台中央には天井から床に届く長い布が、これもまた四角いスペースを作っている。

          布に囲まれたスペースが、何か神聖な場所のように見える。

           

           

           

          精神病棟の一室で目覚めた男は、自分の名前すら覚えていないという記憶喪失だった。

          「あなたが自分で思い出すことが重要なのだ」という医師とその助手の看護師。

          だが男が記憶を取り戻すことは、ある殺人事件の全容解明を意味していた…。

           

           

           

          親に捨てられて肩を寄せ合うように育った兄と妹。

          妹に対する兄の束縛が次第にエスカレートしていく様が

          台詞の端々から息苦しいほどリアルに伝わってくる。

          大学生になって、それが少しずつ疎ましく思い始める妹の変化が上手い。

          妹の彼氏の、優しいがキレると言動が180度変わるキャラが大変良かった。

          3人のキャラがくっきりして、衝撃的な“兄による妹殺し”に至る状況に説得力があった。

           

           

           

          その真実の再現シーンと、病棟で記憶を取り戻す治療を受ける男の日常が

          交互に描かれるという構成が効果的で、緊張感あふれる舞台だった。

           

           

           

          私の理解不足かもしれないが、医師の治療計画がイマイチよくわからなかった。

          警察の取り調べの一端を担うという立場は判るが、

          事件の関係者を連れてきて男に会わせるのが唯一のアプローチであり荒療治なのか?

           

           

           

          狂言回しとして心理学の教授が、解説を交えながらかかわりを持って行くという展開が

          非常に解りやすく、また客観的で冷静な視点が加わるところが良かった。

          さひがしジュンペイさんの知的で信頼感が持てる佇まいと台詞が素晴らしい。

          記憶喪失の男を演じた役者さん、(役名と俳優名が一致しないのがとても残残念)

          “記憶を失うことは自己喪失である”ことを体現している。

          誰とも分かち合えない孤独と焦燥感を見事に表していて惹き込まれた。

           

           

           

          愛はもともと極めて身勝手な個人的思い入れだと思う。

          だからこそ相手もそれに応えてくれると信じた時、至上の幸福に浸る。

          時にはそれが相手を傷つけているのに、信じた幸福を否定することが出来ずに暴走する。

          「キ」の烙印はその暴走の果て、社会から突き付けられたエンドマークだ。

           

           

           

          夢野久作の「ドグラ・マグラ」から着想を得たという作品、

          私はあらすじしか知らないが、一度読んでみたいと思った。

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           


          2017.02.26 Sunday

           X−QUEST 「ファントム・ビー」

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                 X−QUEST「ファントム・ビー」 ★★★★

             

             

             

            下北沢の駅前劇場でX−QUESTの「ファントム・ビー」を観る。

            初めてのX−QUESTは、華とキレのあるダーク・ロマン・エンタメ満載ファンタジーだった。

            主人のために血を集める蜂と、バンパイア伝説が上手く絡んで大変楽しい。

            殺陣とダンスのレベルが高くて、その疲れ知らずのパフォーマンスに終始圧倒される。

             

             

             

            ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

             

             

             

            中央奥の壁面には十字架、その両サイドには六角形の蜂の巣の柄。

            太陽の光が届かない北欧の谷間の町。

            個を認めず女王のために血を集めるキラー・ビーたち。

            その集めた血は“F”と呼ばれる怪人に捧げられていた。

            その町に、ドラキュラハンターの二人がやって来た…。

             

             

             

            個を押し殺して社会生活を優先する蜂の生態とドラキュラの融合という

            アイデアがまず素晴らしい。

            体力勝負になりがちな、殺陣とダンスが最後までキレッキレなのも素晴らしく

            ストーリーにメリハリを与える。

            反面、キャラを掘り下げる個々のエピソードが少なくて

            魅力的な登場人物の苦悩がイマイチ浅い印象を受ける。

            ファントムの葛藤、ダンパーの孤独などがもっとビシビシ伝わってきたら

            さらに物語に深みが増すと思った。

             

             

             

            その中で塩崎こうせいさん演じるシャドウのキャラは輪郭がくっきりしている。

            キャラに共感すると、殺陣も感情移入して観るのでより一体感を覚える。

            X-QUESTの楽しさを体現しているようだった。

             

             

             

            詩的な台詞も論理的な台詞もよくこなしているし衣装もとても素敵、

            照明やBGMのセンスも洗練されていて、総じて魅せ方が抜群に上手い。

            次回作もぜひ観てみたいと思った。

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             


            2017.02.08 Wednesday

            劇団虚幻癖 「クライングメビウス」

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                   劇団虚幻癖 「クライングメビウス」★★★★

               

               

               

              下北沢のGeki地下Libertyで劇団虚幻癖の「クライングメビウス」を観る。

              良く鍛えられた役者さんが多く、熱量が伝わってくる舞台。

              台詞で説明し尽そうとするかのような、怒涛の台詞の応酬は迫力あるが

              設定と世界観が面白いので、もっとシンプルな展開でもよいと思う。

              乞食の二人のキャラが面白かった。

              人類は性悪説ということか。

               

               

               

              ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

               

               

               

              階段状になった無機質な舞台。

              革命軍が政府軍と闘い続ける荒廃した世界と、

              平和だが麻薬が蔓延する世界。

              二つの世界は重なって存在し、人は死んだら別の世界の同じ場所で目を醒ます。

              そしてごくたまに、別の世界に住む者同士が一瞬クロスすることがある。

              カメラマンの男と、戦火の中を逃げ惑う女のように・・・。

               

               

               

              全体的に大声で相手の発言を制するパターンが多発。

              ストーリー展開を台詞に頼るよりも、エピソードの積み重ねの方が

              登場人物の人間像に奥行きが出る気がする。

              例えばアリスの母親のキャラや、二人の芸術家など、

              あの言動に至る過去の出来事やいきさつが具体的に語られたらもっと共感できる。

               

               

               

              二人の乞食のキャラは、その点興味深い。

              “堕天使”のような二人の過去、立場の逆転など怒鳴るだけでない台詞で

              紡がれるのが良かった。

               

               

               

              せっかく自由な発想が許される分野である “この世とあの世”の話なのだから

              作者の世界をもっと私たちに聞かせて欲しい。

              別の世界へ移動できる人はいるのか、どうやって移動するのか、

              ノートはどんな人が手にできるのか、終わったノートはどうなるのか、

              生まれ変わった記憶はどこかに残らないのか、何かの拍子に記憶が蘇らないか、

              先に死んで行った者たちが生まれ変わったという証拠はあるのか…。

               

               

               

              芸術論よりも、作者の頭の中の世界を存分に語り表現してほしい。

              こういうテーマを選んだ以上、時に宗教者の如く

              観る者聴く者を惹きつけ、死生観を揺さぶって欲しいのだ。

               

               

               

              それがあれば、おのずと“賑やかし”キャラは減って

              核となるストーリーがくっきりするような気がする。

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               


              2017.02.04 Saturday

              ライオンパーマ 「さらば、ブラックローズ」

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                     ライオンパーマ 「さらば、ブラックローズ」 ★★★★

                 

                 

                 

                大塚の萬劇場でライオンパーマの 「さらば、ブラックローズ」を観る。

                2時間20分という長さを感じさせない舞台だった。

                登場人物のエピソードが丁寧で一人ひとりの背景が浮かび上がる。

                笑いのセンスが良いので小さな台詞に客席が湧く。

                ライオンパーマらしい心温まる展開、そして気の利いたラストに拍手。

                プロの変態、君こそヒーローだ!

                 

                 

                 

                ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

                 

                 

                 

                “音の出る電子機器への注意”に、ここまで力を入れる劇団を私はほかに知らない。

                いまや一つの目玉となった感があって、早めに行って観るべきものとなっている…(?)

                 

                 

                 

                各地を旅する劇団と、常にその劇団と一緒に旅をして夜オープンする

                移動SMクラブ、彼らに共通するのは女王ブラックローズ。

                だが彼女の鞭には哀しい秘密が隠されていた。

                劇団のメンバー、地元住民の参加者、地元の刑事、詐欺親娘、

                そしてプロの変態とその家族が織りなす人生の綾と意外な結末!

                 

                 

                 

                青春を謳歌し損ねた父(橋本一郎)と息子(井坂光佑)の不器用な変化が大変良かった。

                SMクラブのマスクを被った父親がヒーローになっていくプロセスの可笑しさ、

                また母親(比嘉建子)の見事なアメリカンポリスに大笑いした。

                 

                 

                 

                ヤな奴だと思った刑事(樺沢崇)が、詐欺母娘にかける思いやりは感動的。

                人生のやり直しを賭けた娘(あや)の「イー!」は最高だった。

                ラジカセでピーポーパーポーを鳴らす、クールな刑事(北島洋志)のキャラも大変良かった。

                こういうきらりと光るキャラ設定がライオンパーマの面白いところ。

                 

                 

                 

                かつての変身ヒーロー俳優を演じた岩田智世さんがドハマリで存在感抜群。

                それに絡む中堅俳優役の渡辺望さんが、リアルな焦燥感を見せて

                普遍的な“世代交代”の厳しさを体現している。

                ブラックローズ役の絹川麗さんの細くてしなやかな身体が説得力ありまくり。

                 

                 

                 

                プロの変態が考えた、ブラックローズの人生を変えるための小道具が素晴らしい。

                ライオンパーマの優しさと温かさがあふれた結末だった。

                相変わらず加藤岳仁さんは良い台詞を書くが、

                ご自分がそれをしゃべる時は滑舌が甘く、滑りやすいところが安倍首相に似ている。

                二人とも、もはやこれが“芸”になっているのかもしれないが。

                 

                 

                 

                もう少しエピソードを整理してコンパクトにしても良いと思う。

                若干“全部のっけ感”を覚える。

                 

                 

                 

                ライオンパーマ、次は8月に下北沢へ来るという。

                近くて嬉しいな。

                “携帯劇場”も楽しみにしていますよ\(^o^)

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 


                2017.01.28 Saturday

                無頼組合「エンジェル・フォール騎士」

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                       無頼組合「エンジェル・フォール騎士」 ★★★★

                   

                   

                  池袋のシアターKASSAIで無頼組合の「エンジェル・フォール騎士」を観る。

                  久しぶりに観た風吹淳平は円熟味を増してますますいいキャラになってた。

                  定番の楽しみ、おなじみのキャラの安定感、それに今回は悪役が光った。

                  音野暁さんの冒頭の衝撃的な姿も楽しかったが、中盤からの存在感に圧倒された。

                  活劇の楽しさ満載、それにみんなあんなに歌が上手かったの!?とびっくり。

                  次回に続くような終わり方がまたニクい。

                  初日の硬さゆえか、肝心なところで噛んだり、台詞がかぶったりしたのがちょっと残念。

                   

                   

                   

                  ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

                   

                   

                   

                  「探偵小説さながら、喪服の女が依頼人としてやってくるような事件」を待っている

                  私立探偵・風吹淳平の事務所を、まさに喪服の女が訪れて事件は始まる。

                  クリーンなイメージで当選した女性市長の秘書だった堅物の男が

                  愛人と飛び降り心中というニュースが毎日報道されていたが、彼女はその妻だった。

                  夫の無実を晴らしてほしいというその依頼に調査を始めてまもなく

                  彼はひとりの男にぶち当たる。

                  それは風吹自身の過去にまつわる男だった…。

                   

                   

                   

                  サウスベイシティという、金と欲にまみれた街で起こる事件。

                  クリーンな政治家の理想と無力感が良く伝わる展開で、

                  ハッピーエンドにならないところもかなりシビアなストーリーだった。

                  社会のリアルなダークさを描きながら暗くならないのは

                  からりとした風吹淳平のキャラクターと所々に差し込まれる笑いのおかげだ。

                  “時が止まって歌が始まる”という力技もそのひとつ。

                  B級活劇らしい荒唐無稽さと、理不尽な巨悪の実像がうまくミックスして

                  大変楽しいエンタメ作品になっている。

                   

                   

                   

                  今回は風吹淳平の過去が改めて紹介され、私は初めて彼の前歴を知った。

                  そうだったのかぁ、という感慨で、改めて現在の彼を理解できたように思う。

                   

                   

                   

                  人気シリーズには、優れた悪役が必要で

                  今回は特に音野暁さん(ロデオ★座★ヘヴン)がとても良かった。

                  冒頭の女装・歌・ダンスというこれまで観たことのない音野さんを見て

                  びっくりしたり感心したりしたが、中盤から悪役として

                  素晴らしいキャラを生き生きと演じて見せた。

                  この方は目立たない市井に埋もれるような役も上手いが

                  冷静でありながら時に狂気を孕んだ一面を見せる役も素晴らしい。

                   

                   

                   

                  社会悪の犠牲となった桐山を演じた黒木尚典さん、“負け犬の矜持”とも言うべき

                  強い信念が伝わる熱演だった。

                  再会した淳平と実に楽しそうに拳を合わせる場面が印象的。

                  宿敵・泊役の滝澤信さん、銀髪が美しく細いあごに良く似合って敵役として完璧。

                  こういう魅力的な悪役がストーリーを面白くする。

                  クールさに加えてもっとアクの強さが出ると、さらに強烈な印象を残すと思う。

                   

                   

                   

                  次の12月公演を最後に終了するという「騎士(ナイト)シリーズ」。

                  シラカワさんの“ひときわ高く上がる長い脚”が生かされるような

                  新シリーズを期待したい。

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   


                  2017.01.22 Sunday

                  ことのはbox 「カミサマの恋」

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                         ことのはbox 「カミサマの恋」 ★★★★★ 

                     

                     

                    新宿のシアター風姿花伝で、ことのはboxの「カミサマの恋」箱チームを観る。

                    若干無理くりな感じはあるものの脚本が素晴らしい。

                    「カミサマ」とはつまり人の「苦」を知る者なのだろう。

                    「苦」を知って初めて言えることばがあるということを、道子は教えてくれる。

                    それを伝えることの大切さも。

                     

                     

                    ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

                     

                     

                    上手床の間のようなスペースに掛け軸、祭壇のような段々に白い布、太鼓。

                    下手にはソファと椅子、テーブルがあって客はまずここで相談事をする。

                    そして「カミサマ」にきいてみましょう、と祭壇の前へ移る。

                     

                     

                    「カミサマ」道子のところには引きこもりの息子のこと、嫁姑のことなど

                    様々な悩み事が持ち込まれる。

                    道子はそれを聞いて太鼓を叩いて神様にお尋ねし、神の言葉を伝える。

                    人々は神様のことばを素直に聞いて実行する。

                    ある日突然何年かぶりで道子の息子銀次郎が帰って来た。

                    道子自身の辛い過去がよみがえってくる…。

                     

                     

                    さすがに津軽弁は渡辺源四郎商店には敵わないが、努力の跡が感じられる。

                    太鼓を叩きながら歌うような神様へのお尋ねもユーモラスで、思わず笑ってしまう。

                    人生は“人の価値観を受容することの連続”だということが良く解る。

                    それが出来ずに悩み、衝突し、決裂するのだ。

                    人の価値観に耳を貸さない人々が、「カミサマ」道子のことばなら素直に聞く。

                    道子の「まず人の話を聴く」姿勢が秀逸、固い表情がほぐれていく様が自然。

                    道子役木村望子さんのおばあさんぶりが素晴らしく、疲労感までが伝わって来た。

                     

                     

                    元引きこもりの青年が、修行中の由紀に友人の信一をよろしくと頼む場面。

                    引きこもりで学校へ行かなかった自分に、クラスの様子や行事のことを

                    返信が無くてもメールし続けた信一への感謝の気持ちがあふれていて

                    淡々とした台詞にボロ泣きした。

                    もしかしたら終盤の盛り上がりのシーンよりも、客席が泣いたかもしれない。

                    脚本の巧さと、役者の真摯な姿勢が見事に合致した場面だったと思う。

                     

                     

                    畑澤氏の教育者としてのものの見方が私は好きだ。

                    説教臭さを感じないでもないが、ユーモアと人の本音をえぐる洞察力で

                    その普遍性に深く納得してしまう。

                    孤独な道子が人々に適切な助言をすることにより信頼を得て

                    だからまた人が集まってくる、という循環が温かく、ほっとする。

                    全ての人に先入観無しで真っ直ぐ向き合う道子に、私も救われる思いがした。

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     


                    2017.01.13 Friday

                    桃尻犬 「メロン農家の罠」

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                           桃尻犬 「メロン農家の罠」 ★★★★

                       

                       

                       

                      下北沢のOFF OFFシアターで桃尻犬の「メロン農家の罠」を観る。

                      夢も現実も失敗も、怒涛の台詞でぶつけ合うのが心地よいのは

                      次第に露わになる“本音”が清々しいから。

                      ここまで言うから、あのラストかぁ!と妙に納得。

                      お兄ちゃんもお姉ちゃんも、アマンダもいいセン行ってる。

                      台詞と演出の一体感が素晴らしい。

                       

                       

                       

                      ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

                       

                       

                       

                      上手はメロン農家の居間、下手に突き出た雑然としたスペースが

                      ここがCDショップの事務所やら、車の中やらに変化する。

                      もう10年も毎年メロンを盗まれる農家、今年こそはと罠を仕掛けたりしている。

                      現在10歳の妹が生まれてすぐに母は家を出て、その後父が亡くなり

                      家を守るのは独身の兄と、結婚に踏み切れない姉。

                      万引きなんかするような妹を心配しながら暮らしている。

                      そこへ姉に結婚を迫る男や、元ホスト、中国人研修生、風俗店経営者らが関って

                      怒涛のラストへと突入していく…。

                       

                       

                       

                      人の好い兄(森崎健吾)のキャラがリアルで切ない。

                      妹の幸せを願い、みんなの幸せを願い、自分も幸せになりたいと願う。

                      そんな素朴なキャラがぴったりの風貌で実直な兄を熱演、惹き込まれた。

                       

                       

                       

                      次第にエスカレートしていく姉(嶋谷佳恵)の言動も説得力がある。

                      登場した時は曖昧な返事をしながら意思表示の弱い人物像だったが

                      少しずつ不満を募らせて最後は大爆発、聴いていてスカッとした。

                       

                       

                       

                      兄と妹が“本音トーク”でバトる演出が面白かった。

                      CDショップの夫婦が柔らかな関西弁で話すのも心地よい。

                      この脚本家は聴いても話しても生理的に心地よい台詞を繰り出す人だ。

                      相手を攻撃し罵倒する時でさえ、カタルシスを覚える。

                       

                       

                       

                      下ネタや差別ネタは好みが別れるところだろうが

                      それも本音のひとつで、実はみんなが何かしら抱えていることだ。

                      桃尻犬、面白い劇団だなあ。

                      隙の無い役者陣もキャラにはまって、生き生きと台詞を繰り出している。

                      台詞とテンポ、リズムが私的にはどストライク。

                      台詞と演出の一体感が素晴らしく、次の作品が楽しみになった。

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       


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