月町1丁目1番地

月に叢雲 花に風
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2017.11.20 Monday

青☆組 「グランパと赤い塔」

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         青☆組 「グランパと赤い塔」 ★★★★

     

     

     

    吉祥寺シアターで青☆組の「グランパと赤い塔」を観る。

    昭和がこんなにも懐かしく感じられるのはなぜだろう。

    ただの“あの頃はよかった”的なノスタルジーではない。

    “ものづくり”の精神や、他者を敬う気持ちなど、

    現代の日本人が忘れてしまった価値観が息づいているからに他ならない。

    吉田小夏さんは“今となっては古風な価値観”を登場人物に体現させるのが抜群に上手い。

    たぶん人の「品性」というものをとても大切にされているからだと思う。

    若干「星の結び目」を思い起こさせる既視感があったかな。

     

     

     

    ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

     

     

     

    昭和447月、これから取り壊されようとしている古い家に家族が集まって来る。

    中学生のともえ(今泉舞)はグランパからもらった望遠鏡をのぞいて懐かしむ。

    その様子を今は亡きグランパ、祖母、鼓太爺が見守っている。

    想いは東京タワーがまだ建設中だったころ、昭和33年へとさかのぼっていく…。

     

     

    戦前から続く工業所を営む一家を舞台にした群像劇。

    女中・和子役の大西玲子さんが、出入りする大勢の人々をまとめるような

    どっしりとした安定感で素晴らしい。

    主に良く仕え日々を切り盛りする女中に相応しいたたずまいが作品全体の要のよう。

     

     

     

    理想に燃えて戦後復興を支える事業に取り組む夫を、妻として支える

    祖母役の福寿奈央さんがまた凛として実に良いキャラ。

    出来過ぎでなく、酒が入ると“失くしたものの話をしたがる”一面も持ち

    立体的な人物造形が魅力的。

    妻も夫もそれぞれの立場から若い人達を指導し、育てる気風が感じられ

    そういう自覚があの頃の日本を創っていたのだと感じさせる。

     

     

     

    戦地から戻った息子とその妻のぎくしゃくした関係や

    新人女中と技術者の恋なども、復興一色の社会とはいえ

    戦争の傷跡が色濃く残っていた時代の影の部分を感じさせる。

     

     

     

    小瀧万梨子さんの艶やかさがひときわ鮮やかで、強烈な印象を残す。

    派手な服装とは裏腹に、従軍看護婦として満州へ行った経験があり、

    男女問わずひとの心をほどくような包容力を持つ女。

    タンゴを踊るところがとても素敵だった。

     

     

     

    今の時代、あんな風に互いを高め合いながら働く人々がどれほどいるだろうか。

    人も社会も、多くを持たないけれどちゃんと誰かが見ていてくれていた時代。

    東京タワーは、その象徴として屹立している。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     


    2017.11.11 Saturday

    MCR 「墓掘り人と無駄骨」

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           MCR 「墓掘り人と無駄骨」 ★★★★

       

       

       

      下北沢のスズナリでMCRの「墓掘り人と無駄骨」を観る。

      初日の硬さが若干あるものの、飛び道具の劇的効果もあって大変楽しい。

      設定はざっくりしているが、実はなかなか緻密な構造で、このバランスが好き。

      恋ってつまりはこういうものなんだなと思わせるピュアなところが泣かせる。

       

       

       

      ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

       

       

       

      良くない輩がたむろする町の一角。

      殺し屋やホームレス(本井博之)、裏社会を相手にする医者(澤唯)が根城にしている。

      彼氏に振られた女佐藤(佐藤有里子)と殺し屋の川島(川島潤哉)は運命的な出会いをする。

      そして佐藤は川島に、元カレ殺しを依頼する。

      一方5年前に何者かに両親を殺された靖明(堀靖明)は

      友人の志賀(滋賀聖子)から怪しい霊媒師(伊達香苗)を紹介される。

      靖明の両親を死に追いやったのは誰なのか?

      霊媒師は少しずつ真相に近づいて行く…。

       

       

       

      二つの時空が交互に語られる構成が上手い。

      何といっても伊達香苗さんの迫力ボディがにっかつロマンポルノのよう!

      (にっかつ観たことないけど、めっちゃ誉めてるつもり)

      中盤からはそのアンニュイな台詞と手の動きがぴったり合って

      終盤の滑り台に至ってはもはや演技を超えた表現と言って良く素晴らしい。

       

       

       

      殺し屋を演じる川島さんのフツーな感じが効果的で、

      “フツーでない職業が日常になっている男”が浮き彫りになる。

      3人分の新しい戸籍を渡して「目玉頂戴ね」とほほ笑む組織のちっちゃいボス(後藤飛鳥)と、

      淡々とそれに応える殺し屋のやり取りがそれぞれプロっぽくてよかった。

      殺し屋が“痛みを感じない体質”という不幸な設定が、ここではほっとさせる。

      闇医者の澤が平凡なOL佐藤と裏社会の間でバランスの良いキャラを発揮。

      澤さんの口跡の良さと常識的な発言でリアルな存在感を見せる。

       

       

       

      櫻井さんの作品としては珍しく希望の光が差し込むラストだが

      そのための代償があまりに大きいところが、やはりこの作者らしい。

       

       

       

      記憶をたどる旅のプロセスで、靖明と志賀の恋もまた

      両親同様不器用ながら、発展していく兆しを見せたところが初々しくてよかった。

      つまり“痛みを感じない男の痛みを伴うダブル純愛ストーリー”なんだな。

      改めて川島さん、堀さん、澤さんと櫻井作品との相性の良さを感じた。

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       


      2017.10.21 Saturday

      iaku「ハイツブリが飛ぶのを」

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             iaku 「ハイツブリが飛ぶのを」  ★★★★

         

         

         

        こまばアゴラ劇場でiakuの「ハイツブリが飛ぶのを」を観る。

        本当は何が起こったのか、謎めいた冒頭のシーンが印象的で、

        ミステリアスな展開に最後まで引っ張られる。

        この緊張感と、とぼけたやり取りのギャップが可笑しい。

        あの若者の天然傍若無人ぶりに飄々と対する関西弁のお人よしぶり。

        衝撃のラストまで、演じる役者さんの巧さが光る。

         

         

         

         

        ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

         

         

         

         

        激しい嵐の夜、稲妻に浮かび上がるのはスコップを片手に仁王立ちの女性…。

        「火サス」の犯罪シーンのような幕開けにちょっと驚く。

        そこへ登場した男に、彼女は「アキラ!」と呼びかける。

        元々この避難所には9人が暮らしていたが、火山の噴火により8人が死んでしまい、

        生き残った彼女は8人を埋葬、一人で外出していて難を逃れた夫の帰りを待っている。

        「アキラ」と呼ばれた男は、実は夫ではなく、ここに住んでいた妹を探しに来たのだった。

        記憶を失くして夫の顔も忘れてしまった女は彼を「アキラ」だと思い込んでいる。

        似顔絵を描きながら避難所を渡り歩く「夜風っす」と名乗る男、

        出先で噴火に遭い、妻も死んだと思い込んで一か月後に帰宅した、女の夫も加わって

        4人の奇妙な共同生活が始まる…。

         

         

         

         

        明るく笑いながらためらいなく人の心に踏み込む“夜風っす”(佐藤和駿)が

        結果的に“偽アキラ”や“本物アキラ”の心情を掻き出して語らせる、

        というスタイルが面白く成功している。

        オバサンとしては“夜風っす”のキャラはどうも心情的に疲れるけれど、それは

        演じる佐藤さんが“イマドキの若者が自然にやらかしてる”感じを上手く出しているから。

         

         

         

         

        夫と思い込まれた男(緒方晋)が、追いつめられて不安定な女を

        突き放すこともできず寄り添うところがとても良かった。

        柔らかな関西弁で、“夜風っす”に反発しながらも、彼の質問には率直に応えていく。

        その素直さが彼の誠実な行動の根幹にある。

         

         

         

         

        本物のアキラ(平林之英)はイマイチ気が弱くて

        妻の生死を確かめる勇気もなく、1か月も経ってから避難所に戻って来るような男だ。

        かつて同じ避難所にいた別の女性(それが偽アキラの妹)と不倫したという

        負い目もあってますます妻との距離をコントロールできない。

        その気弱さから“偽アキラ”を強く追い出すこともできず、

        そもそも妻に思い出してもらえないという存在感の薄さが露呈する。

        夫の情けなくやるせない思いが台詞の行間に滲んでいた。

         

         

         

         

        8人を埋葬するという壮絶な体験から記憶の一部が欠落したように見える女

        キナツを演じた阪本麻紀さん、どこか“心ここにあらず”な浮遊感が良い。

        本当に「埋葬した」だけなのか、何かあったんじゃないか、と思わせるものがあって

        謎に奥行きを持たせる。

         

         

         

         

        不自然なほどの白髪や、噴火前から避難所で暮らしていた、という設定に

        この国の不安な未来が透けて見える。

        それにしてもこの二人、これからどうなるのだろう。

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         


        2017.09.30 Saturday

        Oi−SCALE 「囚人」

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               Oi-SCALE 「囚人」 ★★★★

           

           

          下北沢の駅前劇場でOi-SCALEの 「囚人」を観る。

          フライヤーの“何かが起こる前の”緊張感溢れるビジュアルからして

          もうすでに不穏なムードが漂っている。

          あっと驚くラストの展開と、そもそもの設定に完全にやられた感じ。

          期待通りのセンスの良い映像と、思いがけなくアナログな演出が同居する

          林灰二ワールド。

          村田充さんが圧倒的な存在感で魅せる。こういう芝居をする人だったのか。

           

           

           

          ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

           

           

           

          舞台には3枚の白い幕が吊るされ、中央の1枚は半円を描いている。

          この半円がくるりと回転すると場面転換と出ハケがなされる仕組み。

          複数のエピソードの登場人物の名前が、その幕に映し出されたりする。

           

           

           

          舞台はとある病院の花壇がある中庭。

          一日の大半をここで過ごす男、太郎(村田充)。

          毎日太郎を見舞う友人、ハルキ(林灰二)。

          そして太郎に“どのくらい死が近づいているか教えて欲しい”と訪れる人々。

          本当は知りたくない“自分の寿命”を聞きにくる人々の、葛藤や家族関係が描かれる。

           

           

           

          いわゆる人知を超えた能力を持つ男を取り巻く“死のエピソード”が綴られるのだが

          途中、作・演出の林灰二さん自身の、素の語りが入るのがユニークな演出だ。

          林さんの父親の「鳥を捕獲して鳴き声を競わせる趣味」のことを話したり

          「僕は神様だから」役者に台詞を言わせ、自由に設定を考える…と語る。

          そして「これも全部台詞です」と言って観客を混乱させる。

           

           

           

          この「神」は最後に、驚愕の設定を明らかにして物語を終える。

          林さんらしい、何気ない電話の会話で。

          実年齢から想定する観客の思い込みを軽々と超え、

          物語を最初から語り直すほどの力技で真実を提示する。

           

           

           

          主演の村田充さんが“死の匂いを嗅ぎ取る男”を淡々と演じて圧倒的な存在感を見せる。

          この長身長髪の謎めいた男を、徹底的してミステリアスにスタイリッシュに描くと思いきや

          素の作者が「僕は何でもできるんですよ」なんて言った後で、驚きの事実を告げるものだから

          観客は改めてこの芝居を冒頭から反芻する、「そうだったのか」と。

          そして村田充という人の“年齢不詳”な演技を再評価する。

           

           

           

          がん患者の男を演じた伊藤慶徳さん、その弟で聾唖の少年役の中尾至雄さんの
          エピソード、ハラハラするような空気が生まれて強い印象を残した。

           

           

           

          「自分の匂いに気が付かない?」と太郎に語りかけるハルキ、

          何があっても決して狼狽しないハルキは、やはり「神」なのだろう。

          相変わらず「神」は雄弁で、お見通しで、自由奔放であった。

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           


          2017.08.30 Wednesday

          aibook 「失踪」

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                 aibook 「失踪」 ★★★★★

             

             

            下北沢の駅前劇場でaibook の「疾走」を観る。

            キャラにドンピシャの役者陣が素晴らしい。

            松本紀保さんのたおやかさが際立って美しい。

            危うい人々から目が離せない1時間50分、

            それだけにラスト不思議な爽快感が残る。

             

             

            ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

             

             

            浅いプールのような演技スペースを挟んで対面式の客席。
            奥は地方都市のスナックの店内、反対側は福祉施設の屋上だ。
            この二つの場所を行き来しながら物語は進んでいく。



            スナックのママ可奈子(松本紀保)は、客のひとり柏木(瓜生和成)と不倫関係にある。
            義父の介護施設で働く柏木は、どうやら贈賄に関る仕事をさせられている様子で
            スタッフたちも不審な告発メールや噂に翻弄されている。
            スタッフの中には“戸籍が無い”と噂される浅尾(塩野谷正幸)もいて
            父親が疾走したという過去を持つ可奈子をそれとなく見守るようなそぶり。
            そしてある日、ついに柏木は追いつめられて…。

             


            理不尽な組織に都合よく使われ、犠牲になる人はいつの時代にもいるものだ。
            冒頭から、そんな恐れを抱いて柏木を見つめる人々の苛立ちが爆発する。
            妹はそもそも婿入りした兄が歯がゆくて心配で、ついつっかかってしまう。
            はらはらしながら見守る可奈子、「大丈夫」を繰り返す柏木はまるで大丈夫に見えない。

             


            失踪した可奈子の父と、“戸籍が無い”と噂される浅尾、
            そして今まさに組織から都合よく使い捨てにされそうな柏木。
            この3人が重なって過去・現在・未来、同じ悲劇の繰り返しが透けて見える。

             


            この作品の力強いところは
            人生は「疾走」、「疾走」するのは「生きるため」、死ぬくらいなら「失踪」しろ!
            というメッセージだ。
            やられっぱなしでたまるか、という窮鼠猫噛みの一撃が清々しい。
            可奈子の、柏木の妹に対する叫びが象徴するように、
            “さんざん見て見ぬ振りをしてきた人々”に、逃げた人間を責める資格などあるか、
            という倫理が大きな説得力を持つ。



            不器用な人々が吹き寄せられるように集まって来る店のママを演じた
            松本紀保さんがたおやかで素晴らしい。
            声にも仕草にも品がありすぎるが、水商売のしたたかさを持ち合わせるキャラが良い。

             


            責任感と罪悪感にまみれた柏木を演じた瓜生和成さん、
            冒頭から彼の重い疲労感が伝わる佇まいが秀逸で、「大丈夫」のリフレインが虚しく響く。

             


            謎の多い浅尾役の塩野谷正幸さん、柏木に「まだ間に合う」と詰め寄るところに
            説得力があり、それがまた彼の謎の過去を思わせて上手い。



            「木枯し紋次郎」のテーマ曲が非常に効果的。
            無頼で孤独な紋次郎の、だがその人生は絶望的ではない。
            “捨てながらも生きている”感じが登場人物すべてに重なって沁みる。



            人生は「疾走」、「疾走」するのは「生きるため」、死ぬくらいなら「失踪」しろ!
            その強烈な開き直りが人を救う。
            そこには、自殺などには無い、絶対的な希望があって観る者も救われる気がする。

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             



             


            2017.07.28 Friday

            椿組 「ドドンコ、ドドンコ、鬼が来た」

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                   椿組 「ドドンコ、ドドンコ、鬼が来た」 ★★★★

               

               

               

              新宿の花園神社で、椿組の「ドドンコ、ドドンコ、鬼が来た」を観る。

              夏になるとやっぱり夜の野外劇が恋しくなる。

              芝居本来のおおらかな力強さと、客席に向かってくる直球ストレートな表現。

              夏の野外劇には骨太な人間臭さが似合う。

              2017年の花園神社には、権力に翻弄され打ちのめされながらも

              再び立ち上がる人間の素朴なたくましさが舞台いっぱいに繰り広げられた。

               

               

               

              ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

               

               

               

              昔山奥に俗世間から隔離されたような隠里があった。

              人々は「外の世界には鬼がいる」という先祖代々のことばを信じ、ひっそりと暮らしている。

              ところが掟を破って外の世界を除いた若者が制裁を受けて逃げ出したのをきっかけに

              それを追って出た数人が外の世界の情報をもたらし、

              さらには世間知らずの彼らを利用しようと商人たちも乗り込んできて、

              里の日常は一変する…。

               

               

               

              信じて来た価値観が根底から崩れる不安、それでも新しい世界を知りたいという欲望、

              人間の心が千々に乱れる様が描かれて生々しい。

              里で制裁を受けて逃亡したが、町で広い社会を知り、

              再び里に乗り込んで自分の欲望を満たそうとする若者が良い。

              演じる濱仲太さんが、善良そうな顔つきから次第に悪徳商人のそれに変わるあたり、

              大変リアルで迫力があった。

              終盤、かつて里で受けた傷を晒しながら激白する場面の説得力が素晴らしかった。

              この芝居で一番人間くさいキャラだった。

               

               

               

              また旅回り一座の白塗りの女形を演じた谷山知宏さんが強烈な印象を残した。

              この人が登場すると場をさらってしまうほど客席が湧いた。

              これもまた実に魅力的なキャラだった。

               

               

               

              土の上の芝居、屋台崩し、役者によるビールの売り声、階段まで客席になる満員御礼…。

              洗練とはまた違った方向性を追求して30年になるという花園神社の夏を満喫した。

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               


              2017.07.14 Friday

              SPIRAL MOON 「おんわたし」

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                     SPIRAL MOON 「おんわたし」★★★★

                 

                下北沢の「劇」小劇場でSPIRAL MOON の「おんわたし」を観る。

                沖縄の小さな島の郵便局を舞台に、ここに住む人、出ていく人、訪れる人の

                秘めた心情と温かな交差が描かれる。

                波の音と風が心地よい郵便局のセットが素晴らしい。

                首振りの扇風機がカーテンを揺らし、出演者の髪を揺らし、客席に島の風を吹き込む。

                解りやすい登場人物のキャラが次第に陰影を帯びていくエピソードが秀逸。

                この展開、この受容の精神は、やはり「おんわたし」の精神が根付く沖縄ならではだろう。

                観客に委ねる部分が心地よくもあるが、同時に物足りなさも感じるのは要求し過ぎか…。

                 

                 

                 

                ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

                 

                 

                 

                会場に入ると風が吹いている。
                上手には、郵便局おなじみお取り寄せ名産品の見本、テーブルと椅子、
                入り口の外には石垣と赤い花が見えて南国らしさが漂う。
                下手は一段高い畳敷きの事務スペースで、奥は郵便局長の居住スペースになっている。
                局長は今、浜で拾ったコーラの瓶に入っていた10年前の手紙に返事を書くことに夢中。
                近所の人々が集まってアイスコーヒーを飲んだりするのんびりしたこの郵便局に
                ある日東京からひとりの青年が保護司に連れられて来る。
                誰にも笑顔を見せないこの青年は一体

                 



                郵便局に集まって来る人々のキャラが楽しい。
                バイトながらしっかり郵便局を切り盛りするおきゃん(早川紗代)、
                「嫁が欲しい」畑をやってる41歳の吾郎(保倉大朔)、
                民宿経営者の庄吉(牧野達哉)など、皆個性豊かで温かい。
                青年(榎本悟)の素性を知った後の、周囲の態度の変化にもそれぞれのキャラが反映される。

                 



                局長が返事を書いたボトルメッセージの少女に代わって島を訪れたのは、
                その母親(秋葉舞滝子)だった。
                子育ての失敗から娘を喪ったことを10年間悔やみ続ける母親と、
                片や10年間、罪を償って外へ出た青年が「おんわたし」の島で出会うというエピソードが
                主軸でありそれが大変良かったと思う。
                共に苦しい10年を過ごした2人が、初めて心を通わせる相手として相応しい。
                恩を受けたらその人ではなく、隣の人に返すという島の優しいルールが生きる。

                 



                青年の家族でいられなくなるほどの罪が何だったのか具体的には示されないが
                それは観る人の想像で良いと思う。
                でもあのあと彼がどう変化したのかを知りたい気がした。
                私の観方が浅いせいかもしれないが、保護司の徹底的な庇護のもとにあった青年が
                そこから一歩踏み出せたのか、意識の変化にとどまったのか、それが観たかった。

                 



                「おんわたし」を目に見えるかたちで、というのは作者の意図に反するのかもしれない。
                でも見て安心したいと思ったのだ。
                演じる榎本悟さんの硬い表情や緊張した動きには制限された人生が色濃く出ていた。
                本当の更生は、そこから一歩踏み出して初めてスタートするのだと思う。
                彼の自我と更生の第一歩を目で見て安心したいというのは私の身勝手かもしれないが
                それは苦し気な更生への道を演じる榎本さんがとても良かったからに他ならない。

                 



                最初はただの合コン好きだった吾郎が次第に魅力的に見えてくる。
                演じる保倉さんの他の芝居を観たいと思った。
                設立20周年企画に相応しく、座組みの良さが感じられる作品だった。

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 


                2017.07.03 Monday

                ロデオ★座★ヘブン 「大喪の葬送」

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                       ロデオ★座★ヘブン 「大喪の葬送」 ★★★★★

                   

                  王子の花まる学習会王子小劇場でロデオ★座★ヘブンの 「大帝の葬送」を観る。

                  十七戦地の柳井祥緒さん脚本・演出でこのテーマなら、

                  繊細さと大胆な構成を両立させるに違いないと信じていたが、まさに期待以上だった。

                  大帝の葬送の実行に至る裏方の160日間を、会議室という限られた空間で描く。

                  柳井さん得意の設定で、史実をなぞるだけでない厚みのある人間ドラマになっている。

                  こんな重いテーマなのに、時々くすりと笑わせるのは台詞と役者の力。

                   

                   

                   

                  ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

                   

                   

                   

                  天皇の体調悪化を受け、宮内庁内では具体的な準備が始まる。

                  お上に仕える奥の方と、事務、警察、儀式、法律など様々な分野の責任者が集合、

                  政教分離と伝統の継承に配慮した新しいかたちの葬送を模索する…。

                   

                   

                   

                  現実的には会議室に入れないはずのライターを狂言回しとして配したのが良かった。

                  ラストで明かされる奥の方とのつながりから、お上に対する強い思いを持ち

                  同時に国民の一人としての素朴な視点も持ち合わせている。

                  演じる澤口渉さんの緊張感ある台詞がドラマを引っ張り、時間の経過が解りやすい。

                  「関係者席」として確保していた客席の椅子を3か所使ったのも上手いと思う。

                   

                   

                   

                  同じく現実的ではないが、元華族(?)で右翼の女性「愛国の方」を入れたのも良いスパイス。

                  実際右翼団体の動きには神経を使っただろうし、発言・行動にはリアリティあり。

                  中村真知子さん、後半の精いっぱい虚勢を張った姿が強く印象に残る。

                   

                   

                   

                  そのほかの登場人物は皆リアルで、それぞれの陛下に対する思いと

                  職業人としての高い意識を感じさせて共感を呼ぶ。

                  熱い思いが先走りがちなメンバーを押さえつつ会議をまとめていく事務の人、

                  演じる音野暁さんの実直なキャラがハマって、要の役割に相応しい。

                   

                   

                   

                  奥の人を演じた朝倉洋介さん、お上のお側近くに仕える人らしい品格と端正な動き、

                  「鏡を使ってお上に月をお見せした」と静かに話すだけで涙が出そうになった。

                   

                   

                   

                  同じく奥の方の女性役、百花亜希さんの着物姿が凛として美しい。

                  伝統と改革をバランス良く備えたキャラが大変魅力的で、皇室の未来を感じさせる。

                   

                   

                   

                  崩御も“国家のアピールと国会運営の一環”とみなす政治家の先生が良いキャラ。

                  後半一転して、愛国の方に「スーパーのレジ打ちでしょ」とぶちかまして黙らせるところ

                  スカッとして実にカッコ良かった。何だ、いいとこあるじゃん、この先生と思わせる。

                  演じる大原研二さんの座る姿勢や扇子の使い方がいかにも先生“らしい。

                   

                   

                   

                  大喪の礼当日、見送る人々の傘が濡れていたのも細やかな演出でとても良かった。

                  メモや印刷物が乱雑に散らかった会議室内が、

                  ラスト事務の人によって丁寧に回収されていくシーンが象徴的。

                  号泣する彼の思いが伝わって来るシーンだった。

                   

                   

                   

                  難しい宮内庁・法律用語を上手く説明しながらの台詞に工夫があり、理解を助けられた。

                  当時を思い出して、改めて裏方の苦労をさもありなんと思う。

                  映像の使い方、チラシのデザインも印象的。

                   

                   

                   

                  史実に別の視点を投入して、“事実を複眼で見せる”ことに成功している。

                  これが柳井流の面白さだと思う。

                  ライターと共に、時代の終わりと始まりを垣間見た思いがする。

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   


                  2017.07.01 Saturday

                  VICE★ 「泥の中」

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                         VICE☆ 「泥の中」 ★★★★★

                     

                     

                    下北沢の駅前劇場でVICE☆の「泥の中」(男性版)を観る。

                    会話の中に過去の人生が立ち上る面白さを堪能した。

                    台詞と間の良さ、それに登場人物を予感させる見事な“ショボい店”のセット。

                    男たちのキャラのバリエーションが絶妙。

                     

                     

                     

                    ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

                     

                     

                     

                    ちらと覗いただけで「やめとこ」となりそうな場末の酒場。

                    いくつかのテーブルの間に不揃いなイスが乱雑に置かれ、

                    ビールは店の隅のクーラーボックスから直接取り出し、つまみは乾き物しかない。

                    (去年食中毒を出して以来そうなった、というのがすごい説得力)

                    店主の満作(林和義)が小上がりで寝ているところへユリ(小林さやか)が訪れる。

                    小学校時代から憧れの人、ユリを追って北海道から東京まで追って来た満作は有頂天。

                    常連客の吾郎(省吾)、遠藤(有川マコト)、それに満作の腹違いの妹(なかの綾)は

                    突然の展開に、それぞれの思いから狼狽する。

                    そんな店に新たな客(本間剛)が加わったところへ、謎の男(古川悦史)が入ってくる。

                    ことば巧みに人心を掌握していく男は一体何者なのか…?

                     

                     

                     

                    男はみんな純粋で、それは人を騙す男でさえも同じ。

                    だが女は騙されない、常に騙す側だ。

                    “騙している”という意識すらなく、軽やかに渡り歩く。

                    翻弄され疲れ果てた男たちが集まるのが、この“名もない”店なのだ。

                     

                     

                     

                    登場人物全員が、どこかうさん臭さを持っているところがいい。

                    それでいて、まだ何かを信じたりすがったりするピュアな部分が残っている。

                    人を騙す人間は、その残ったピュアな部分に訴えかけてくるんだな。

                    謎の男のことばに感化され、彼を「先生」と呼んで変化していく男たちが滑稽だが

                    やがてその「先生」さえも煩悩に支配されていることが判明する。

                     

                     

                     

                    唯一達観したような存在が、ホームレスのサリーさん(松本哲也)だ。

                    騙しも騙されもせず、異臭をまき散らしながら店の冷蔵庫から麦茶を出して飲む。

                    周囲が“元は伝説の博打打ち”と勝手に設定しているのが可笑しい。

                     

                     

                     

                    芸達者な男たちの中で紅一点、胡散臭くて可愛い女を演じた小林さやかさんが上手い。

                    不自然なハイテンションぶりと冷徹な観察眼が同居するしたたかさを持つ女、

                    騙されたと判ったのちも、男が追いかけたくなる女を軽やかに演じた。

                     

                     

                     

                    緻密な台詞と絶妙の間が、会話劇の面白さを堪能させて飽きない。

                    力の抜けたキャラが上手く配置されて“騙されキャラ”にもいろいろあるんだな、

                    でも共通点があるんだな、と思わせる。

                     

                     

                     

                    満作を一番打ちのめしたのは、失ったものではなく、

                    ユリの「役立たず」というひと言だろう。

                    今この店を必要としているのは、誰よりも満作だろうと思った。

                    サリーさん、助かって欲しいなあ。

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     


                    2017.06.09 Friday

                    演劇企画集団THE・ガジラ 「ドグラ・マグラ」

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                           演劇企画集団THE・ガジラ 「ドグラ・マグラ」 ★★★★

                       

                       

                       

                      新宿のSPACE雑遊で 演劇企画集団THE・ガジラ の「ドグラ・マグラ」を観る。

                      奇書と言われる原作の異様な世界観が色濃く出ていて惹き込まれた。

                      長台詞の合間に差し込まれる、流しの「水」、照明の切り替え、効果音、

                      それに雑遊の造りを活かした演出が作品全体にメリハリを持たせている。

                      それが作品理解を助けてくれる感じ。

                      緊張感と狂気“の2時間15分。

                       

                       

                       

                      ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

                       

                       

                       

                      拘束着のような白いツナギを来た男が目覚めたのは

                      九州大学医学部精神病科の独房。

                      記憶を失って自分が何者なのかも判らず混乱する彼の前に教授が現れ

                      「自分で思い出さなければ意味がない」と告げる。

                      男は殺人者呉一郎なのか、中国の猟奇殺人者の末裔なのか、

                      さらに、研究のためには手段を選ばぬ教授たちの犠牲になったのか、

                      次々と繰り出される過去の再現シーンは夢なのか現なのか…。

                       

                       

                       

                      全体像を把握することが出来ないまま引きずり回される感じが不快ではない。

                      男と判らなさを共有し、伴走しながら同じ景色を見る感覚が面白い。

                      「ドグラマグラ」は理解しようとするより、所々で展開する論理に感心する方が楽しい。

                       

                       

                       

                      例えば「犯罪者の記憶は遺伝子に組み込まれて連綿と受け継がれる」、

                      「死人の腐敗する様を克明に描くことで、楊貴妃に溺れる皇帝を諫めようとする」、

                      また「そのために了解を得た上で妻の首を絞めて殺害する」、等々。

                      作品が発表された1935年当時の、夢野久作の想像力と狂気の表出方法に驚く。

                       

                       

                       

                      記憶を失い、今や存在そのものが危うくなった男の絶望的な孤独が

                      もう少し見えたら良かったと思う。

                      台詞を噛む場面が散見され、せっかくの緊張感が途切れてしまったのが惜しい。

                       

                       

                       

                      その中でアフリカン寺越さん演じる助手が不気味な空間を体現していて素晴らしかった。

                      何度も観ている役者さんだが、しばらく気づかなかったほど。

                      例えば鍬を振り上げる教授に無言で近づく時の緊張感あふれる動きや

                      鍵束の音をジャラジャラさせて歩いてくる姿勢など

                      座っているだけで強烈な存在感があった。

                       

                       

                       

                      呉一郎より、教授陣の方が狂っているような気がしてくる。

                      照明と効果音が強い印象を残す演出はさすが。

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       


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