月町1丁目1番地

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2018.01.10 Wednesday

ゴツプロ! 「三の糸」

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         ゴツプロ!「三の糸」 ★★★★

     

     

     

    下北沢本多劇場でゴツプロ!の「三の糸」を観る。

    最初のコメディタッチはイマイチすんなり入ってこなかったが

    その後怒涛の展開で一気に惹き込む力はさすが。

    連綿と受け継がれる芸道の厳しさと、翻弄される個人の葛藤が描かれる。

    後半の浜谷さん、塚原さんのキャラの切り替えが鮮やかで目を見張った。

     

     

     

    ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

     

     

     

    舞台中央に1本の古木が天井までそびえている。

    山深いこの場所は、津軽三味線の万沢流初代が幼くして捨てられていた場所。

    二人の兄弟は盗みをして生きていたが、三味線と出会って新しい道を歩み始めた。

    以来、家元を継いだ者はみな、この場所へ報告に来る習わしとなっている。

    だが今の七代目だけは、ずいぶんと遅れて今日ようやくここへやって来たのだった。

    やがて奇妙な男たちが現れる・・・。

     

     

     

    言わばコメディとシリアスを合わせ持つ骨太ファンタジーと言えようか。

    若干冒頭のコメディ部分が長く感じられるのは、人間関係が見えていないせいか。

    やがて七代目との関係が明らかになり、それぞれの家元継承事情が語られると

    物語は一気に緊張感を増して面白くなる。

     

     

     

    それにしても後半、塚原大助さんのキャラの切り替えの見事さ。

    また浜谷康幸さんの驚愕の事実を受け止める台詞の切なさ。

    こういう人がいるからゴツプロ!はただの“男劇団”ではないのだ。

     

     

     

    ラストの三味線は大変な努力の跡がうかがえる素晴らしい演奏だったが

    やはりここはプロの小山会にも「三の糸」の音色を響かせて欲しかった。

    流派と家元の重みを印象付けるためにも。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     


    2018.01.08 Monday

    渡辺源四郎商店 「ハイサイせば」

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           渡辺源四郎商店 「ハイサイせば」 ★★★★★

       

       

       

      こまばアゴラ劇場で渡辺源四郎商店の「ハイサイせば」を観る。

      現実の重みと軽妙な笑い、その絶妙なバランスが素晴らしい。

      沖縄と青森という、接点が薄いと思われる2つの地域を

      卓越した発想力と若干の力技で見事につないで魅せる。

      まさに今、現代にもう一度起ころうとしていることを見る思いがした。

       

       

       

      ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

       

       

       

      舞台中央、横長に置かれたテーブルとその前に4脚の椅子は

      全て白い布で覆われ、上から紐のようなものでぐるぐる縛られている。

       

       

       

      ここは海軍省内部、理由も告げられないまま連れて来られた4人、

      青森出身の2人と沖縄出身の2人は、敵に傍受されないよう

      方言による電話通信に協力するよう命令される。

      が、その目的にはある秘密が隠されていた…。

       

       

       

      津軽弁と琉球語という強烈な個性を持つ言語の“わからなさ”がとにかくおかしい。

      特に今回は琉球語の解らなさ加減が突出しており、津軽弁が聞き取りやすかったほど。

      だがその琉球語の解らなさのおかげで、人々は何と理不尽な扱いを受けたことか。

       “わけのわからない言葉を使う、スパイのような怪しいやつ”というレッテルを貼られ、

      軍隊でも他は県ごとに配属されたのに、沖縄だけはバラバラに配属されたという。

      沖縄は今も昔も屈辱的な、不当な扱いを強いられている。

       

       

       

      三上晴佳さんの、沖縄の人とことばに対して敬意を払う態度が素晴らしい。

      わからなさの先にある、ことばとしての力に尊敬の念を抱いていることが伝わって来る。

      「田舎者めが」「ごく潰しか」という海軍少佐のつぶやきは、

      そのまま政府の姿勢を表している。

       

       

       

      同時多発でまくしたてられる二つの言語の解らなさに笑っているうち

      それを冷やかに上から見ている“政府のやり方”に気付く。

      このコントラストが鮮やかで素晴らしい。

       

       

       

      私は畑澤氏の“教育者としての視点”が好きだ。

      「何にも知らずにぼーっとしている日本人」に、常に何かを突き付けてくる。

      まず知ることが全ての始まりであることを思い出させてくれる。

      「方言札」をはじめ、今回も初めて知ることが多かった。

      「遠くで起こることを身近に」というメッセージを発信し続ける

      渡辺源四郎商店をこれからも追いかけたい。

       

       

       

       

      翌日青森県出身の友人ともう一度観劇。

      この日はアフタートークもあったので、この企画の“そもそも話”が聞けた。

      沖縄の当山氏が、2015年に小劇場の運営を学ぶため

      全国を視察して回った中に「渡辺源四郎商店」も含まれていた。

      その際「いつか一緒に」という話をしたことが実現したのだという。

       

       

       

      沖縄の歴史という、まずゆるぎない事実ありきからスタートする制作、

      なべげんの「伝えたいことは演劇を通して伝える」姿勢は

      制約であると同時に使命感でもあるのではないか。

       

       

       

      生き生きとした闊達さ、哀愁を帯びたトーンなど

      ネイティブの方言でしか表現できない世界が見事に合体した作品だった。

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       


      2017.12.15 Friday

      天幕旅団 「室温〜夜の音楽〜」

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             天幕旅団 「室温〜夜の音楽〜」 ★★★★★

         

         

         

        新宿のSPACE梟門で天幕旅団の「室温〜夜の音楽〜」を観る。

        これが面白かった。

        素晴らしく良く出来た戯曲、これを選び演出した渡辺さんのセンス、

        激情ほとばしる台詞を誰一人噛まない役者陣、と久しぶりに観ていて熱くなった。

        奇妙なオープニング、「たま」の不気味なまでに乾いた歌詞が異様な世界に誘う。

        だがそれはごく普通の人々のすぐ隣に存在していて、それが空恐ろしい。

         

         

         

        ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

         

         

         

        舞台中央に大きなダイニングテーブル、部屋の隅には猫足の電話台に黒電話。

        古い洋館に住む心霊研究家の海老沢(凪沢渋次)と娘のキオリ(渡辺実希)。

        だがキオリの双子の姉妹サオリの命日の日、この家には何人もの来客があった。

        毎日のように入り浸る警官(佐々木豊)、

        気分が悪いから休ませてくれと上がり込んだ図々しいタクシー運転手(竹田航)、

        熱心な海老沢のファンだという女性(もなみのりこ)、

        そしてサオリを死に追いやった4人の少年のうちのひとり間宮(渡辺望)が

        10年の刑を終えて出所し、海老沢家を訪れる…。

         

         

         

        実はこれら登場人物は皆、誰かを殺した、あるいは殺そうとしている。

        前半の滑らかでない人間関係の原因は、後半一気に明らかにされ、

        驚愕の事実が明かされる。

        誰かを殺したいと思う理由はそれぞれだが、“憎悪”という点で一致している。

        憎悪の理由が明かされるプロセスがスリリングでたまらない。

        これは人間を犯罪へと突き動かす最も強い原動力である“憎悪”のたぎる芝居である。

        たぎる芝居だから皆よく吠えるのだが、吠え方がまた良かった。

        切羽詰まった、あるいは追いつめられた、あるいは他の手段を思いつかないほどの

        “憎悪”を懐に持つ登場人物たちの陰影が素晴らしい。

         

         

         

        渡辺実希さん、ここ何作かで暗い感情をむき出しにする役に磨きがかかった感じ。

        最初に間宮を罵倒するシーンは圧巻の迫力。

        佐々木豊さん、笑いを誘う前半のコミカルなイメージと、

        後半一転して狂気を爆発させるシーンとのギャップが素晴らしい。

        渡辺望さん、元不良少年だが、ピュアな部分も持ち合わせている間宮を演じた。

        犯人にもかかわらず思わず好感を抱いてしまうのは、

        犯罪者でありながら一番普通の感覚の持ち主に見えることのほかに、

        渡辺さんの素の品の良さも理由のひとつだろうか。

        抽象的な犯行理由が、あとから説得力を持ってじわりとにじみ出して来る。

        加藤晃子さん、以前ほどの少年っぽさはないが、浮遊する不思議な存在感がある。

         

         

         

        もなみのりこさん、偽名を使って海老沢に近づく女の表裏が上手い。

        竹田航さん、観ている方がイラつくほどのうざいキャラ。

        ハイテンションで隙なく演じていて巧み。

         

         

         

        ケラさんは、こんなダークな本も書くんですね。

        軽い笑いを入れながらずどんと落とされた感じでとても見応えがあった。

        天幕旅団の底力を見た思いがする。

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         


        2017.12.03 Sunday

        初級教室 「高速を降りて、国道を2キロ走った、モミの木に囲まれたカフェレストラン」

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               初級教室 「高速を降りて、国道を2キロ走った、モミの木に囲まれたカフェレストラン」★★★

           

           

           

          下北沢OFF OFFシアターで初級教室の

          「高速を降りて、国道を2キロ走った、モミの木に囲まれたカフェレストラン」を観る。

          それを奇跡と信じるか、偶然の重なりと受け取るかによって、真実の色合いは変わる。

          役者さんは隙なく熱演、悪人も出てこない、美しいエピソード、

          だがちょっと物足りなさを感じるのは、人々を取り巻く現実的な背景が見えづらいせいか?

           

           

           

          ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

           

           

           

          高速道路が出来たため、経営難に陥っている森の中のカフェレストラン。

          オーナー夫妻から店を任されている青年信之助(石井俊史)と、

          オーナーの親戚で、知的障害を持つ聖美(川口果恋)が日々切り盛りしている。

           

           

           

          オーナー夫妻には、交通事故で2人の子どもを死なせたという苦しい過去がある。

          実は聖美は親戚ではなく、オーナーが森の中に座っていた少女を連れ帰って来たのだった。

          あまりにも死んだ娘にそっくりだったから。

          そしてもう1人、オーナーが見出した若手バンドのメンバーのひとりも、

          死んだ息子にそっくりだった…。

           

           

           

          森とレストランの一帯を買い取って再開発しようとする堀田(奥村渉)の

          真意がつかみづらかったのが残念。

          オーナーの一族と昔選挙で争ったことがあるらしいが

          どんな思いでここへ戻って来たのかがあっさりしすぎて伝わってこない。

           

           

           

          聖美が本当に奇跡を起こすなら、オーナーの病気が治るはずだが

          そこは単なるファンタジーではない作品らしく、一方的なハッピーエンドに終わっていない。

          人生はハッピーもアンハッピーも同じくらいあるのだというバランスが良かった。

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           


          2017.11.30 Thursday

          スタジオアルタ 「アラタ〜ALATA〜」

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                 スタジオアルタ 「アラタ〜ALATA〜」 ★★★

             

             

             

            有楽町のオルタナティブシアターでスタジオアルタの「アラタ〜ALATA〜」を観る。

            新しい劇場のワクワク感もあって気分よく開演を待った。

            パントマイムと各国語による注意事項が写しだされる前説など、

            外国人客を意識しているらしい。

            ノンバーバルということで、チャンバラとダンスに期待していたが

            期待にたがわぬ迫力ある殺陣とキレのあるダンスが素晴らしかった。

             

             

             

            ただセットの無い舞台で、映像によって場面を示すのはよいとしても、

            途中アニメのような巨人が映し出されて人間を踏みつけようと向かってくるシーンには

            ちょっと興ざめ。

            身体能力のあるパフォーマーのダンスがどれも似たパターンになるのも残念。

            殺陣とダンスでメッセージを伝えるには限界があると感じざるを得ない。

            早乙女さんは声も良いし、主役からアンサンブルまで

            身体的にも鍛えられた役者さんが出ているのに

            台詞がひと声ふた声というのが物足りなく感じられる。

            もう少し効果的に台詞を入れたり、ダンスのバリエーションをつけたりしたら

            演劇ファンもつくだろうと思った。

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             


            2017.11.25 Saturday

            劇団マリーシア兄弟 「グリーンピース」

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                   劇団マリーシア兄弟 「グリーンピース」 ★★★★

               

               

               

              下北沢のGeki地下Liberty でマリーシア兄弟の「グリーンピース」を観る。

              今回笑いの割合は高めだが、何気に“めっちゃ深い事”を言うのがマリーシア流。

              コンビニの休憩室を舞台に繰り広げられる夢と挫折とFA宣言(!)

              グリーンピースの名前の由来が、絆を感じさせて心温まる。

              全体の構成と、ミドリのキャラが とても良い。

              お笑いの脚本が良く出来ていてびっくりした。

               

               

               

              ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

               

               

               

              倉庫を改造したコンビニの休憩室に、廃棄になる弁当をもらいに従業員がやって来る。

              お笑いコンビのミドリ(大浦力)とカズヤ(森優太)、

              ミュージシャンを目指してバンドを組んでいるヒロ(狩野健太郎)とシゲオ(紀平悠樹)。

              その中でカズヤは、お笑いを辞めたいとミドリに言い出せずに悩んでいた。

              役者志望のミドリをお笑いに誘ったのはカズヤだったのに・・・。

               

               

               

              冒頭、ネタ合わせをするコンビの漫才で始まるのがテンポ良くてとても良い。

              リアルを追及すると時として緩くなりがちなオープニングが、最初からぐっと集中させる。

              キャラのバランスが良い。

              ねずみ講まがいの商売を「マルチビジネス」と言い張って勧誘する“空気読まない”シゲオ。

              あまりミュージシャンらしくないが、意外とまっとうな意見を持つヒロ。

              夢を追うには自信がなく、辞めたいと言い出せずに今日まで来た気弱なカズヤ。

              そして突然コンビ解散を突き付けられても淡々と受け容れようとするミドリ。

               

               

               

              キモは相方の選択を応援しようとするミドリの心情と、その背景にある過去だが、

              次第に明らかになるその事情がしんみりさせて説得力がある。

              冒頭のネタをラストでもう一度繰り返す構成が成功している。

              最初に軽い笑いで観たシーンを、全く違った思い入れで観ることになる。

               

               

               

              ラスト二度目のネタ披露で、観客がカズヤと一緒に泣きたくなるには、

              どこかでひとつ、ドラマチックな展開が必要かなと思う。

              例えばカギを握るミドリのエピソードを、友だちの口から言わせるのではなく

              どれかをミドリ本人から効果的に語らせる、直接カズヤに伝える、

              淡々と、少ない台詞で父親への思いを語ったら、切なさは倍増する気がする。

               

               

               

              真面目な部分で少し台詞を絞ると、エピソードも心情も印象が強く残ると思う。

              校長先生のお話にはそれが上手く凝縮されていて効果的だ。

              ミドリの達観したようなキャラがとても魅力的なので、

              素の部分と、芸人としてのテンションの高さのギャップがもっと出せれば

              二度目のネタ披露は切なくて観ている方も泣きたくなるだろう。

              二人の最後の舞台、まさに“始まりと終わりと卒業”がそこにあるから。

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               


              2017.11.20 Monday

              青☆組 「グランパと赤い塔」

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                     青☆組 「グランパと赤い塔」 ★★★★

                 

                 

                 

                吉祥寺シアターで青☆組の「グランパと赤い塔」を観る。

                昭和がこんなにも懐かしく感じられるのはなぜだろう。

                ただの“あの頃はよかった”的なノスタルジーではない。

                “ものづくり”の精神や、他者を敬う気持ちなど、

                現代の日本人が忘れてしまった価値観が息づいているからに他ならない。

                吉田小夏さんは“今となっては古風な価値観”を登場人物に体現させるのが抜群に上手い。

                たぶん人の「品性」というものをとても大切にされているからだと思う。

                若干「星の結び目」を思い起こさせる既視感があったかな。

                 

                 

                 

                ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

                 

                 

                 

                昭和447月、これから取り壊されようとしている古い家に家族が集まって来る。

                中学生のともえ(今泉舞)はグランパからもらった望遠鏡をのぞいて懐かしむ。

                その様子を今は亡きグランパ、祖母、鼓太爺が見守っている。

                想いは東京タワーがまだ建設中だったころ、昭和33年へとさかのぼっていく…。

                 

                 

                戦前から続く工業所を営む一家を舞台にした群像劇。

                女中・和子役の大西玲子さんが、出入りする大勢の人々をまとめるような

                どっしりとした安定感で素晴らしい。

                主に良く仕え日々を切り盛りする女中に相応しいたたずまいが作品全体の要のよう。

                 

                 

                 

                理想に燃えて戦後復興を支える事業に取り組む夫を、妻として支える

                祖母役の福寿奈央さんがまた凛として実に良いキャラ。

                出来過ぎでなく、酒が入ると“失くしたものの話をしたがる”一面も持ち

                立体的な人物造形が魅力的。

                妻も夫もそれぞれの立場から若い人達を指導し、育てる気風が感じられ

                そういう自覚があの頃の日本を創っていたのだと感じさせる。

                 

                 

                 

                戦地から戻った息子とその妻のぎくしゃくした関係や

                新人女中と技術者の恋なども、復興一色の社会とはいえ

                戦争の傷跡が色濃く残っていた時代の影の部分を感じさせる。

                 

                 

                 

                小瀧万梨子さんの艶やかさがひときわ鮮やかで、強烈な印象を残す。

                派手な服装とは裏腹に、従軍看護婦として満州へ行った経験があり、

                男女問わずひとの心をほどくような包容力を持つ女。

                タンゴを踊るところがとても素敵だった。

                 

                 

                 

                今の時代、あんな風に互いを高め合いながら働く人々がどれほどいるだろうか。

                人も社会も、多くを持たないけれどちゃんと誰かが見ていてくれていた時代。

                東京タワーは、その象徴として屹立している。

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 


                2017.11.11 Saturday

                MCR 「墓掘り人と無駄骨」

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                       MCR 「墓掘り人と無駄骨」 ★★★★

                   

                   

                   

                  下北沢のスズナリでMCRの「墓掘り人と無駄骨」を観る。

                  初日の硬さが若干あるものの、飛び道具の劇的効果もあって大変楽しい。

                  設定はざっくりしているが、実はなかなか緻密な構造で、このバランスが好き。

                  恋ってつまりはこういうものなんだなと思わせるピュアなところが泣かせる。

                   

                   

                   

                  ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

                   

                   

                   

                  良くない輩がたむろする町の一角。

                  殺し屋やホームレス(本井博之)、裏社会を相手にする医者(澤唯)が根城にしている。

                  彼氏に振られた女佐藤(佐藤有里子)と殺し屋の川島(川島潤哉)は運命的な出会いをする。

                  そして佐藤は川島に、元カレ殺しを依頼する。

                  一方5年前に何者かに両親を殺された靖明(堀靖明)は

                  友人の志賀(滋賀聖子)から怪しい霊媒師(伊達香苗)を紹介される。

                  靖明の両親を死に追いやったのは誰なのか?

                  霊媒師は少しずつ真相に近づいて行く…。

                   

                   

                   

                  二つの時空が交互に語られる構成が上手い。

                  何といっても伊達香苗さんの迫力ボディがにっかつロマンポルノのよう!

                  (にっかつ観たことないけど、めっちゃ誉めてるつもり)

                  中盤からはそのアンニュイな台詞と手の動きがぴったり合って

                  終盤の滑り台に至ってはもはや演技を超えた表現と言って良く素晴らしい。

                   

                   

                   

                  殺し屋を演じる川島さんのフツーな感じが効果的で、

                  “フツーでない職業が日常になっている男”が浮き彫りになる。

                  3人分の新しい戸籍を渡して「目玉頂戴ね」とほほ笑む組織のちっちゃいボス(後藤飛鳥)と、

                  淡々とそれに応える殺し屋のやり取りがそれぞれプロっぽくてよかった。

                  殺し屋が“痛みを感じない体質”という不幸な設定が、ここではほっとさせる。

                  闇医者の澤が平凡なOL佐藤と裏社会の間でバランスの良いキャラを発揮。

                  澤さんの口跡の良さと常識的な発言でリアルな存在感を見せる。

                   

                   

                   

                  櫻井さんの作品としては珍しく希望の光が差し込むラストだが

                  そのための代償があまりに大きいところが、やはりこの作者らしい。

                   

                   

                   

                  記憶をたどる旅のプロセスで、靖明と志賀の恋もまた

                  両親同様不器用ながら、発展していく兆しを見せたところが初々しくてよかった。

                  つまり“痛みを感じない男の痛みを伴うダブル純愛ストーリー”なんだな。

                  改めて川島さん、堀さん、澤さんと櫻井作品との相性の良さを感じた。

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   


                  2017.10.21 Saturday

                  iaku「ハイツブリが飛ぶのを」

                  0

                         iaku 「ハイツブリが飛ぶのを」  ★★★★

                     

                     

                     

                    こまばアゴラ劇場でiakuの「ハイツブリが飛ぶのを」を観る。

                    本当は何が起こったのか、謎めいた冒頭のシーンが印象的で、

                    ミステリアスな展開に最後まで引っ張られる。

                    この緊張感と、とぼけたやり取りのギャップが可笑しい。

                    あの若者の天然傍若無人ぶりに飄々と対する関西弁のお人よしぶり。

                    衝撃のラストまで、演じる役者さんの巧さが光る。

                     

                     

                     

                     

                    ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

                     

                     

                     

                     

                    激しい嵐の夜、稲妻に浮かび上がるのはスコップを片手に仁王立ちの女性…。

                    「火サス」の犯罪シーンのような幕開けにちょっと驚く。

                    そこへ登場した男に、彼女は「アキラ!」と呼びかける。

                    元々この避難所には9人が暮らしていたが、火山の噴火により8人が死んでしまい、

                    生き残った彼女は8人を埋葬、一人で外出していて難を逃れた夫の帰りを待っている。

                    「アキラ」と呼ばれた男は、実は夫ではなく、ここに住んでいた妹を探しに来たのだった。

                    記憶を失くして夫の顔も忘れてしまった女は彼を「アキラ」だと思い込んでいる。

                    似顔絵を描きながら避難所を渡り歩く「夜風っす」と名乗る男、

                    出先で噴火に遭い、妻も死んだと思い込んで一か月後に帰宅した、女の夫も加わって

                    4人の奇妙な共同生活が始まる…。

                     

                     

                     

                     

                    明るく笑いながらためらいなく人の心に踏み込む“夜風っす”(佐藤和駿)が

                    結果的に“偽アキラ”や“本物アキラ”の心情を掻き出して語らせる、

                    というスタイルが面白く成功している。

                    オバサンとしては“夜風っす”のキャラはどうも心情的に疲れるけれど、それは

                    演じる佐藤さんが“イマドキの若者が自然にやらかしてる”感じを上手く出しているから。

                     

                     

                     

                     

                    夫と思い込まれた男(緒方晋)が、追いつめられて不安定な女を

                    突き放すこともできず寄り添うところがとても良かった。

                    柔らかな関西弁で、“夜風っす”に反発しながらも、彼の質問には率直に応えていく。

                    その素直さが彼の誠実な行動の根幹にある。

                     

                     

                     

                     

                    本物のアキラ(平林之英)はイマイチ気が弱くて

                    妻の生死を確かめる勇気もなく、1か月も経ってから避難所に戻って来るような男だ。

                    かつて同じ避難所にいた別の女性(それが偽アキラの妹)と不倫したという

                    負い目もあってますます妻との距離をコントロールできない。

                    その気弱さから“偽アキラ”を強く追い出すこともできず、

                    そもそも妻に思い出してもらえないという存在感の薄さが露呈する。

                    夫の情けなくやるせない思いが台詞の行間に滲んでいた。

                     

                     

                     

                     

                    8人を埋葬するという壮絶な体験から記憶の一部が欠落したように見える女

                    キナツを演じた阪本麻紀さん、どこか“心ここにあらず”な浮遊感が良い。

                    本当に「埋葬した」だけなのか、何かあったんじゃないか、と思わせるものがあって

                    謎に奥行きを持たせる。

                     

                     

                     

                     

                    不自然なほどの白髪や、噴火前から避難所で暮らしていた、という設定に

                    この国の不安な未来が透けて見える。

                    それにしてもこの二人、これからどうなるのだろう。

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     


                    2017.09.30 Saturday

                    Oi−SCALE 「囚人」

                    0

                           Oi-SCALE 「囚人」 ★★★★

                       

                       

                      下北沢の駅前劇場でOi-SCALEの 「囚人」を観る。

                      フライヤーの“何かが起こる前の”緊張感溢れるビジュアルからして

                      もうすでに不穏なムードが漂っている。

                      あっと驚くラストの展開と、そもそもの設定に完全にやられた感じ。

                      期待通りのセンスの良い映像と、思いがけなくアナログな演出が同居する

                      林灰二ワールド。

                      村田充さんが圧倒的な存在感で魅せる。こういう芝居をする人だったのか。

                       

                       

                       

                      ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●

                       

                       

                       

                      舞台には3枚の白い幕が吊るされ、中央の1枚は半円を描いている。

                      この半円がくるりと回転すると場面転換と出ハケがなされる仕組み。

                      複数のエピソードの登場人物の名前が、その幕に映し出されたりする。

                       

                       

                       

                      舞台はとある病院の花壇がある中庭。

                      一日の大半をここで過ごす男、太郎(村田充)。

                      毎日太郎を見舞う友人、ハルキ(林灰二)。

                      そして太郎に“どのくらい死が近づいているか教えて欲しい”と訪れる人々。

                      本当は知りたくない“自分の寿命”を聞きにくる人々の、葛藤や家族関係が描かれる。

                       

                       

                       

                      いわゆる人知を超えた能力を持つ男を取り巻く“死のエピソード”が綴られるのだが

                      途中、作・演出の林灰二さん自身の、素の語りが入るのがユニークな演出だ。

                      林さんの父親の「鳥を捕獲して鳴き声を競わせる趣味」のことを話したり

                      「僕は神様だから」役者に台詞を言わせ、自由に設定を考える…と語る。

                      そして「これも全部台詞です」と言って観客を混乱させる。

                       

                       

                       

                      この「神」は最後に、驚愕の設定を明らかにして物語を終える。

                      林さんらしい、何気ない電話の会話で。

                      実年齢から想定する観客の思い込みを軽々と超え、

                      物語を最初から語り直すほどの力技で真実を提示する。

                       

                       

                       

                      主演の村田充さんが“死の匂いを嗅ぎ取る男”を淡々と演じて圧倒的な存在感を見せる。

                      この長身長髪の謎めいた男を、徹底的してミステリアスにスタイリッシュに描くと思いきや

                      素の作者が「僕は何でもできるんですよ」なんて言った後で、驚きの事実を告げるものだから

                      観客は改めてこの芝居を冒頭から反芻する、「そうだったのか」と。

                      そして村田充という人の“年齢不詳”な演技を再評価する。

                       

                       

                       

                      がん患者の男を演じた伊藤慶徳さん、その弟で聾唖の少年役の中尾至雄さんの
                      エピソード、ハラハラするような空気が生まれて強い印象を残した。

                       

                       

                       

                      「自分の匂いに気が付かない?」と太郎に語りかけるハルキ、

                      何があっても決して狼狽しないハルキは、やはり「神」なのだろう。

                      相変わらず「神」は雄弁で、お見通しで、自由奔放であった。

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       


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