月町1丁目1番地

月に叢雲 花に風
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2012.05.27 Sunday

青☆組「キツネの嫁入り」

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         青☆組「キツネの嫁入り」

    こまばアゴラ劇場で初めての青☆組「キツネの嫁入り」を観る。
    厳選された台詞と音響、極めて日本的な題材をモダンな空間で魅せる
    素晴らしい舞台だった。
    なんであんなに涙がこぼれたのか、まだ反芻している。


    ●〜○〜●以下ネタバレ注意●〜○〜●


    土俵のように少し高くなった白い八角形の舞台は、なだらかに裾が広がる。
    和な感じの格子や行燈のような照明が天井から下がっている。


    「むかーしむかし・・・」で始まり「めでたしめでたし」で終わる昔話。
    それが未来に語られる昔話となれば、話はこの2012年から少し経った頃か。
    一輪の花を手にした出演者が客席の間を通って舞台へと向かう。
    とても静かな、しかし打楽器の響きと共に強烈な印象を残す出だしだ。
    このオープニングで一気に、現実と幻想が入り混じった不思議な世界に惹き込まれる。


    あることが起こってそれ以後女の子が生まれなくなった小さな島の物語だ。
    島の反対側には危険なものがある“行ってはいけない場所”がある。
    人々の暮らしは優しく素朴だが、島の花は年々枯れて行き
    特産のはちみつの採取量も少なくなってきている。
    島にたった2人しかいない女、そのうちの1人が亡くなった所から話が動き出す。


    父親と二人の息子、それに甥っ子の4人が暮らす男所帯にキツネが嫁に来る。
    冒頭亡くなったのは長男の妻で、1年後島の存続のためにもという
    村長のたっての頼みもあり長男はキツネの嫁をもらう。
    島の暮らしには湿り気のある古い日本の地方色が濃く出ていてとても懐かしい。
    蝉の声、蜩の声、波の音など定番中の定番が、これ以外に考えられないほどハマる。


    大切な人を喜ばせようと命を削って誰かに化けるキツネ。
    死んだ女房の代わりでなく、キツネ自身を愛するようになった長男。
    まるで鶴の恩返しのようなキツネの献身が愛おしい。


    知的障害を持つ次男を演じた青年団の石松太一さんが素晴らしい。
    ただ一人、純粋さを損なわずに大人になった人間として
    素直に心情を吐露する人に、一分の隙もなくなりきっている。
    後ろ向きの時でさえ、その表情が手に取るようにわかって共鳴せずにいられない。
    青年団のクオリティと、そのサポートシステムのすごさを改めて実感する。


    全体のテンポが、若い人の作品とは思えないほどゆったりしていて
    厳選された台詞が際立つ
    あの会話の丁寧な間とタメは吉田小夏さんの作品に共通するものなのか、
    若い世代には貴重な、自然な忍耐強さを感じる。
    情報量を多く、ボリュームを上げて急いで喋る芝居が多い中で
    これは「語り」のテンポとでも言えようか、言葉がひとりでに立ち上がるようだ。
    その結果人物像がくっきりして、会話は静かでも緊張が途切れない。


    ひとつの役を複数の役者が演じる場面が多いが、とても上手くつながっているのは
    役者の力と構成の上手さかと思う。
    現実と幻想、過去と現在が自在に交差する構成とそれに伴う人の出入りに工夫があって
    複雑なのにわかりやすかった。
    被災地を思わせる表現にも、センスの良さと女性らしい繊細な視点を感じる。
    吉田小夏さん、凄い人だなあ。


    「めでたし、めでたし・・・」で終わるこの昔話、
    終わってみればSFかホラーか寓話か、そしてとても哀しいおとぎ話だ。
    今の私たちには協力してくれる心優しいキツネもなく
    人間は愚かな行いの果て一直線に滅びて行くのかもしれない。
    でもこんな素晴らしい舞台を観てから滅びるなら私の人生は幸せだと思う。
    それこそ「めでたし、めでたし」な舞台をほんとにありがとう。

























    2017.12.15 Friday

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